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経済・企業 インフレ時代の投資術

《不動産》増えている「空き屋投資」、改修・賃貸で利回り1割超 大熊重之

 不動産投資にもいろいろあるが、最近増えているのが「空き家投資」。ただし、ある程度のノウハウや知識が必要だ。>>特集「インフレ時代の投資術」はこちら

大都市近郊や地方に投資物件

 インフレが進んで預貯金の価値が目減りしている。それに対抗するため、不動産に投資して賃料収入を得る方法を検討する人もいるだろう。しかし、2018年、スルガ銀行による不正融資が発覚してから、銀行は投資用不動産購入者向け融資の審査を厳しくした。以前のようにサラリーマンがワンルームマンションなど投資用不動産を購入するために住宅ローンを契約するのは難しくなったのだ。

 一方、自己資金から数百万円を投じ、主に空き家となった戸建て住宅を買う人が増えている。私が理事長を務める全国古家再生推進協議会(大阪府東大阪市)は空き家投資に関するオンライン講座や空き家・古家物件の見学ツアーを開催している。昨年関与した物件は225件に上った。物件購入費は全国平均で約320万円、リフォーム(改修)費は約263万円、合計は約583万円だった。地域によっては、投資総額が500万円を下回る物件もある。

 空き家に投資する人は老後に不安を持つ40代、50代が中心だ。19年に「老後資金2000万円問題」が話題になった後、本業のほかに収入源を得たいと考え、空き家投資に興味を持つ人が増えたようだ。

 協議会が関わった空き家投資の利回りは昨年、全国平均13.53%だった。一般的な不動産投資に比べて相対的に高い点も魅力的に映っていると思う。高い利回りを確保するにはそれなりのノウハウが必要だ。地価が高い大都市の中心部は当然、利回りが低くなる。狙い目は首都圏では相模原市、埼玉県春日部市、千葉県松戸市といった東京都心に通勤できるが、通勤時間が長めの場所だ。京阪神では堺市、大阪府東大阪市、枚方(ひらかた)市、兵庫県尼崎市、姫路市、奈良市だ。滋賀県にも適所がある。

地方都市のメリット

 他方、地価が安い地方都市の物件なら、大都市郊外の物件より多くの金額をリフォームに使える。例えば、投資総額が600万円の場合、大都市郊外なら300万〜400万円の物件を買い、リフォームに200万〜300万円を費やすのが典型例だが、地方都市なら200万円程度で購入してリフォームに400万円程度かけるケースが多い。

 地方都市の賃料水準は首都圏郊外と比べて低めだが、床面積が広くて居住性が高ければそれなりの賃料が得られる。結果的に利回りが首都圏郊外より高くなるケースが多い。

 地方都市では大都市圏より持ち家志向が強く、戸建ての賃貸物件が少ないのが一般的だ。そのような場所に物件を持てば、賃貸市場で有利に働くという面もある。また、地方都市であれば、駅や観光地に近いなど利便性が高く、それなりの賃料が期待できる物件でも投資額は抑えられる。最近、東北新幹線の福島駅や白石蔵王駅(宮城県白石市)から徒歩圏の物件があった。

 ただし、リスクもある。協議会が関わった案件ではないが、空き家取引の当事者から「購入後、想定したより工事費がかかった」と聞くことがある。ほかにも、不動産業者に「この立地では借り手がつかない」と告げられて困惑する人、自分で改修するつもりだったが手に負えずに引き取り手を探している人もいる。空き家に投資する上で最も重要なのは、手に入れるべき物件を正しく見極めることだ。未経験者にとって、リフォーム費がどの程度必要になるかや相場家賃などは判断しにくい。見学を重ねるなどして知識を深めることが肝心だ。

(大熊重之・全国古家再生推進協議会理事長)


週刊エコノミスト2022年11月15日号掲載

不動産 増える空き屋をリフォーム 大都市近郊や地方に投資物件=大熊重之

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