国際・政治東奔政走

「政治資産」生かせぬ首相 「サミット解散」論が急浮上 平田崇浩

閣議に臨む岸田文雄首相。内閣支持率は急落している(11月4日)
閣議に臨む岸田文雄首相。内閣支持率は急落している(11月4日)

 参院選勝利から臨時国会召集までの3カ月間、岸田文雄首相は何をしていたのだろうか。次の参院選まで国政選挙に政権の体力をそがれることなく政策課題に打ち込めるはずだった「黄金の3年間」は、内閣支持率の急落とともに霧消した。首相周辺では、政権運営のリセットを図ろうと、来年5月のG7広島サミット(主要7カ国首脳会議)に合わせて衆院解散・総選挙に打って出る「サミット解散」論が急浮上している。

 選挙の勝利によって得た「国民の支持」と、次の選挙までの「時の利」は大きな政治資産であり、それをどう生かすかが政治リーダーの評価を決める。

レガシー焦った安倍氏

 安倍晋三元首相は2014年12月の衆院選で大勝した後、集団的自衛権の行使を可能とする安全保障関連法の制定に突き進んだ。それは国論を二分し、一時は内閣支持率の急落を招いた。だが、中国の台頭によって不安定化するインド太平洋情勢において、日米同盟を基軸として民主主義諸国と連帯する日本の外交姿勢を明確化したことは、安倍政権が政治資産を政治遺産(レガシー)に生かした実績として評価されよう。

 その後の安倍政権は「モリ・カケ」問題などの不祥事対応に追われ、16・19年参院選、17年衆院選の勝利で得た政治資産を国民・国家のために生かしたとは言い難い。安倍元首相がさらなるレガシーづくりを狙った①ロシアとの平和条約交渉(プーチン大統領への接近)②中国との関係改善(習近平国家主席の国賓来日)③憲法改正(自衛隊明記など4項目)──はいずれも道半ばに終わった。

 安倍元首相の実績として「安倍外交」を評価する声は根強いが、安保関連法制定以降についてはどうだろうか。ロシアが14年にウクライナのクリミア半島を一方的に併合した後も、欧米諸国がロシアに制裁を科す中でプーチン大統領との会談を重ねた「親露外交」は大きな禍根を残した。

 中国の軍事的台頭をけん制しつつも、東アジアの隣国として良好な関係を築く努力が必要であることは論をまたない。しかし、香港の民主化運動を弾圧し、チベット自治区や新疆ウイグル自治区での人権侵害が批判を浴びている習主席を国賓として招待することは違う次元の問題だ。新型コロナウイルスのパンデミックがなかったら、20年春に習主席が来日し、天皇陛下が会見されていたかもしれない。08年の胡錦濤氏以来となる中国国家主席の公式訪問で歴史的な外交文書を交わそうとしていたのは分かるが、安倍元首相自身の引き際を飾るレガシーづくりを焦ったように思えてならない。

 長期政権の幕引きを考えるなら、まずはアベノミクスの出口戦略を描いてほしかった。大規模な金融緩和と財政出動に頼り続けたツケはいよいよ歴史的な円安となって日本経済を揺さぶっている。円の価値は第2次安倍政権の発足した10年前から対ドルで3分の2以下に減じた一方、国内総生産(GDP)はそれほど増えていない現実が岸田政…

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