日本は戦争はしていないのに、平和とは程遠い感じがするのはなぜ/151
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Q 日本は戦争はしていないのに、平和とは程遠い感じがするのはなぜ
日本は治安がよく、格差も相対的に小さいことから「平和ボケの国」といわれますが、理想的な状況であるようにも思えません。戦争はしていませんが、いい世の中とは程遠い感じがするのはなぜでしょうか?(大学生・20代男性、製造業・40代男性)
A 構造的暴力を生まない積極的平和を目指し「超越点」を探ってみよう
ロシアのウクライナ侵攻などを見ていると、つい日本は平和でよかったと感じてしまうかもしれません。でも、相談者が指摘されている通り、だからといっていい世の中だとはいえません。この問題を考えるのに参考になるのが、「平和学の父」として知られるノルウェーの思想家ヨハン・ガルトゥングです。
ガルトゥングはまず暴力について再定義を行いました。暴力とは決して行為主体によって引き起こされる物理的な力の行使に限られるものではなく、貧困や差別など社会構造レベルのものも含まれるといいます。そして、そうした暴力を構造的暴力と名付けました。
だから本当の平和とは、構造的暴力を生み出さない社会の仕組みを作ることにほかならないのです。それは暴力が存在しないだけの消極的平和に対し、積極的平和と呼ばれます。
完全解決の調停役
では、積極的平和を実現するためには、どうすればいいのでしょうか? ガルトゥングが提唱した方法の中で実際によく使われているのは、「トランセン…
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週刊エコノミスト
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