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米インフレに鈍化の兆し 利上げ停止観測強まる 鈴木敏之
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11月10日に発表された米国の10月分の消費者物価指数(CPI)は、食料品とエネルギーを除いたコア指数で前月比プラス0.3%と、市場予想より低めの数字だった。この結果を受け、米連邦準備制度理事会(FRB)による利上げ幅が縮小され、さらに利上げ停止の時期も近づいたという見通しになり、その日の金融市場は株高、金利(債券利回り)低下、ドル安の強い反応を示した。
「逆CPIショック」として注目されたのは、食料とエネルギー、さらに居住費を除いた指数。10月は前月から下がりマイナス0.1%で、インフレが消えていた。また、CPIコアが前月比プラス0.3%であると、FRBが重視する10月の個人消費支出(PCE)コア指数の前月比は、プラス0.3%よりも小さくなると見込まれるため、PCEコアの前年同月比が5%を超える可能性が小さくなった。
他方では、FRBが景気の先行きを見る上で注目する3カ月と18カ月の先物金利の長短逆転が起きている。景気先行指数も7月に前年を割っている。景気先行指数が前年を割ると、数カ月でNBER(全米経済研究所)の認定する景気後退に陥ることが多い。
また、雇用者の動きは景気先行指数に遅行するので、今後、雇用者の増加が鈍ることが見込まれる。直近の10月の非農業部門雇用者増加数は26.1万人。15万人を割ると、労働需給に緩み(スラック)が生じるのだが、これは2023年の前半にも起こりうる。
仮にPCEコアの前年同月比が5%を上回らないならば、FF金利(政策金利)を5%にしておけば、傍らで量的引き締めもやっているので、経済にブレーキをかけていることになる。現在のFF金利は誘導目標上…
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週刊エコノミスト
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