へんてこりんでけた外れな魅力と、異様な偉容と 石川健次
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美術 展覧会 岡本太郎
1970年の大阪万博に行けなかった私は、自慢気に話すクラスの友達がうらやましかった。ずいぶんと親をうらんだりもした。岡本太郎(1911~96年)の名を知ったのはそのころだろう。
同万博の象徴となった岡本の《太陽の塔》のへんてこりんな風情は、私がアートにひかれるきっかけでもあったかもしれない。万博後、やがてテレビCMなどで「芸術は爆発だ!」と叫ぶ姿が世間的には「ギャグとして受け入れられ」(本展図録)るにつけ、岡本自身もへんてこりんに映った。
でも、芸術は「うまくあってはいけない。きれいであってはならない。ここちよくあってはならない」など挑発的なフレーズが並ぶ岡本の名著『今日の芸術』を読み、何より作品に触れるなかで、けた外れな魅力に、真意にひかれていく。へんてこりんは、しばしば未知なものにつきまとう印象に似て、けた外れの言い換えに過ぎない。
絵画や彫刻、さらに文化・芸術論の執筆などジャンルを超え、あるいは戦後いち早くアヴァンギャルドの理念を鼓吹したかと思うと、美術史から無視されてきた縄文土器の価値をクローズアップするなど計り知れない多彩な活動で知られる岡本の全貌に本展は迫る。
代表作はもちろん、83年に岡本自身によりソロモン・R・グッゲンハイム美術館(ニューヨーク)へ寄贈され、国内での展示は約40年ぶりという初期の油彩画《露店》(1937/49)も並ぶなど、とり…
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週刊エコノミスト
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