教養・歴史アートな時間

ヴィクトリア朝に生きた挿絵画家とその妻の、単純ではない愛の物語 芝山幹郎

©2021 STUDIOCANAL SAS - CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION
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映画 ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ

 邦題(「ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ」)を見ると、話にきれいごとが多いのではないか、と思う人がいるかもしれない。可愛くまとめすぎているのではないか、と疑う人がいてもおかしくはない。

 だが、これはそう単純な映画ではない。ルイス・ウェイン(ベネディクト・カンバーバッチ。映画のなかでは一貫してルイと呼ばれているが、題名に合わせてルイスと表記する)は実在の人物だ。ヴィクトリア朝ロンドンの上流階級に生まれている。

 映画の序盤、その性格は《多方面の分野に興味を抱き、動きまわることで心の混沌を制している》とナレーションで説明される。なかなか大変な人生だが、とくに彼が惹かれているのは、実用化されて間もない〈電気〉だ。美や愛情や魅力の核には電気が流れている、と彼は考える。つまり、エーテルや霊感に通じる物質。天才肌の奇人を演じると抜群に冴えるカンバーバッチには、ぴったりのはまり役だ。

 1881年、父を亡くした長男ルイスは、一家を養わなければならなくなる。発明家にあこがれ、美術教師か音楽家になることを夢見ていた彼だが、思いは叶わず、挿絵画家としてささやかな収入を得はじめる。

 そんな折、出会ったのが妹の家庭教師エミリー(クレア・フォイ)だ。エミリーの出身階級は低く、ルイスよりもかなり年長だ。ルイスはルイスで、生まれつき口唇裂があり、口ひげでそれを隠してい…

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