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国際・政治 エネルギー

原油減産→インフレ→利上げ→景気後退→さらに減産 “負の連鎖”が日本の体力を奪う 岩間剛一

OPECプラスの会合後に記者会見をするサウジアラビアのアブドルアジズ・エネルギー相(中央) Bloomberg
OPECプラスの会合後に記者会見をするサウジアラビアのアブドルアジズ・エネルギー相(中央) Bloomberg

 日本はエネルギー価格の高騰だけでなく、円安も重なって貿易赤字が拡大し、国富が流出する悪循環に陥っている。

日本から産油・産ガス国へ年間35兆円が流出

 サウジアラビアなどOPEC(石油輸出国機構)加盟国と、ロシアをはじめとした非加盟の産油国によるOPECプラスは、11月1日から日量200万バレルの協調減産を実施した。これは世界の石油需要の2%に相当する大規模なものであり、10月5日の減産決定後には原油の世界的な指標価格である米WTI原油先物は1バレル=90ドル台に上昇した。

 OPECプラスによる今回の協調減産は、景気減速に伴う世界の今後の石油需要の減少に対応したといえる。しかし、今回の大幅な協調減産による原油価格の高騰が、米国をはじめとした先進国の物価上昇を引き起こし、先進国の金融引き締めと利上げにより、世界経済の落ち込みが加速する可能性がある。また、これがOPECプラスをさらなる協調減産に追い込むという、危険な負の連鎖を招きかねない。

 今年2月のロシアによるウクライナへの侵攻により、国際原油価格は高騰し、3月にはWTI原油価格は1バレル=130ドル超と、2008年以来の高値を付けた(図1)。しかし、その後の先進国、途上国の景気後退懸念から、今年9月には1バレル=76ドル台まで下落した。月を追うごとに、世界と米国の経済成長率見通しが低下しており、それに伴って世界の石油需要も減少することが見込まれている。

 IMF(国際通貨基金)によれば、今年の世界と米国の実質GDP(国内総生産)成長率の見通しは、今年4月時点で3.6%(世界)、3.7%(米国)だったが、10月時点で3.2%(世界)、1.6%(米国)に低下した。IEA(国際エネルギー機関)の石油需要見通しも、今年10月時点で今年は日量9960万バレル、23年に日量1億130万バレルと、前回9月の見通しから今年は日量6万バレル、23年は日量47万バレル引き下げている。

 OPEC自身も、今年10月の石油市場月報で、世界の石油需要が今年は日量9957万バレル、23年に日量1億202万バレルと伸び悩むと見込む(図2)。OPECのアルガイス事務局長は11月、大幅な協調減産を決めた理由について、OPECが日量3000万バレル程度の原油生産を行えば、日量200万バレルを超える供給過剰となり、23年第1四半期(1~3月)も供給過剰の状況が続くことを挙げている。

泥を塗られたバイデン氏

 OPECプラスの協調減産に対して、バイデン米政権は「目先の原油価格の上昇だけを考えた決定」「ロシアに同調している」と強く非難した。米国ではガソリン価格が1ガロン(約3.8リットル)当たり5ドルを超え、自動車社会の米国国民に不満が高まっている。バイデン大統領は7月にサウジを訪問し、ムハンマド皇太子に原油増産を懇願していただけに、完全に顔に泥を塗られた形となった。

 バイデン大統領はムハンマド皇太子が著名記者殺害事件に関与したとして非難していたが、11月8日の中間選挙を控えて、サウジ訪問では人権問題をあえて棚上げにしていた。それでも、サウジが実質的に主導して協調減産に踏み切ったことに対抗すべく、バイデン大統領は今年12月に1500万バレルのSPR(戦略石油備蓄)を追加放出することを決定した。米国議会ではサウジへの最新兵器の供与見直しの動きも始まっている。

 原油価格の上昇、穀物価格の上昇などによる物価上昇は、米国経済に打撃を与えている。今年9月の米消費者物価指数(CPI)は前年同月比8.2%の上昇を記録し、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は、景気浮揚よりも物価対策を重視する姿勢を鮮明にしており、11月2日にも0.75%の利上げを実施した。0.75%の大幅利上げは今年6月以降、4会合連続となる。

 米国による強い非難に対して、サウジのアブドルアジズ・エネルギー相は、「石油生産への長期的な投資を促すことを目的としており、石油消費国に打撃を与えるものではない」と反論している。OPECは今年10月31日に長期的な石油需要見通しを発表し、45年まで増加する世界の石油需要を確保するため、石油開発への投資が合計12兆1000億ドル(約1700兆円)にものぼるとしている。

 長期的な石油需要見通しでは、45年に向けて先進国の石油需要は減少するものの、途上国の石油需要は大幅に増加し、世界の石油需要は40~45年に日量1億980万バレルに増加すると見込む(図3)。途上国ではガソリン車をはじめとした内燃機関が依然として中心になるとみており、今後も最も重要なエネルギーであり続ける石油をOPECが安定的かつ長期的に供給するためには、一定の価格維持が求められると主張している。

財政黒字化の思惑も

 ただ、産油国側の高値維持の狙いはこれだけではない。ウ…

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