週刊エコノミスト Online 緊急特集 世界大動乱
《緊急特集》「原油150ドル超え」の現実味 ロシアへの制裁でエネルギー政策に大波乱=岩間剛一
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原油・天然ガスの一大産出国であるロシアのウクライナ侵攻が、国際エネルギー市場を大きく揺るがしている。日米欧がロシアの主要銀行を銀行間国際決済ネットワークである国際銀行間通信協会(SWIFT)からの排除を決めたことで、ロシア産の原油や天然ガスの輸出が事実上難しくなることが見込まれ、原油や天然ガス価格が大幅に上昇する可能性がある。
すでに2月24日には、国際主要油種である米ニューヨーク市場のWTI原油先物価格は1バレル=100ドル、英ロンドン市場の北海ブレント原油先物価格は1バレル=105ドルを突破し、WTI原油先物は2014年7月以来7年7カ月ぶりの100ドル超えを記録した(図1)。10年のアラブの春による中東産油国の政治情勢混迷以来の高値を付けている。
ロシアは、最新のBP統計によれば、世界の原油生産量の12・1%(図2)、世界の天然ガス生産量の16・6%を占めるエネルギー大国であり、現在も日量約800万バレル前後とサウジアラビアに次ぐ世界第2位の石油輸出国である。ロシアの軍事侵攻とそれに対する制裁は、脱炭素の流れ、ESG(環境・社会・企業統治)投資により、ただでさえ昨年秋以降において供給不足に直面している国際石油市場を震撼(しんかん)させる。
それに加えて、天然ガス輸出は、20年時点で欧州諸国への輸出を中心にパイプライン輸出が1977億立方メートル(世界輸出シェア21・0%)、LNG(液化天然ガス)輸出が404億立方メートル(世界輸出シェア4・3%)で、パイプラインとLNG合計世界輸出シェアが25・3%と天然ガス輸出の巨人である。天然ガス埋蔵量は、同じく天然ガス大国であるイラン、カタールを抑えて、世界最大となっている。 EU(欧州連合)諸国の天然ガス輸入の4割はロシアからの輸入に依存しており、ロシアへの制裁と、それに伴うロシアからの石油・天然ガス供給途絶は、昨年秋に発生した電力危機に匹敵する欧州天然ガス価格の高騰をもたらす。特に、気温が低下する冬場は、EUの暖房用、発電用の天然ガス需要が増加することから、米国のLNGを少し追加調達しただけではとても足りない。
日本はLNGの1割
ロシアにとって原油、天然ガスは輸出額の半分を占めるが、その貿易はドル建て決済が中心である。イランへの制裁に用いられたように、SWIFTからロシアが排除されれば、ロシアの外貨収入源は断たれる…
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