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「燃やして終わり」を減らせるか 原料に再生するケミカルリサイクルに注目 具志堅浩二

手選別で除去された可燃物をためるヤード 筆者撮影
手選別で除去された可燃物をためるヤード 筆者撮影

 汚れなどで再生困難な廃プラの資源循環を実現するべく、化学原料などに再生するケミカルリサイクルの新技術開発の取り組みが進む。課題もあるが、成功すればインパクトは大きい。

汚れた廃プラも再生する新技術

 筆者がいつも気になるのは、インスタントラーメンの液体スープ袋の処分だ。袋の表面には、プラスチック製容器包装であることを示す「プラマーク」が付いているが、内側は油などでギトギト。筆者が住む自治体では、汚れがとれにくい容器包装は可燃ごみ扱いなので、「容器包装プラなのに」と思いつつ可燃ごみ箱に入れている。

 我が家から出た容器包装プラごみは、大阪府の枚方・寝屋川・四條畷(なわて)・交野の4市が共同設立した「北河内4市リサイクル施設組合」の処理場へ集められる。ここで、ペットボトルとその他の容器包装プラに分けられるが、その過程で可燃物や金属などの異物が取り除かれる。可燃物が集められたヤードには、中身が残った調味料の容器や汚れたフィルムなどがあった。こうした異物は総搬入量の約3%とのことだが、それでも「これらも再資源化できれば」と思わずにはいられなかった。

 プラスチック循環利用協会の資料によると、一般系・産業系を合わせた2020年の廃プラ総排出量の有効利用率は86%とされる。ただし、最も多いのは燃やして熱回収などを行うサーマルリサイクルの62%で、プラ原料などに再生する材料リサイクルは21%、化学原料などに再生するケミカルリサイクルは3%にとどまる。

 サーマルリサイクルを全否定するわけではないが、化石資源を使うことや脱炭素化の流れを考えると、「燃やして終わり」ではなく、できるだけ原料に戻して再生利用する方が望ましい。これを実現すべく、近年はケミカルリサイクルの新技術開発に力を入れる動きが見られる。

化学品の生産目指す出光

 出光興産(東京都千代田区)は目下、廃プラ油化装置などを手掛けるベンチャー企業の環境エネルギー(広島県福山市)とともに、廃プラケミカルリサイクルの事業化に取り組む。

「樹脂の生産者としてプラごみ問題を解決する使命がある」と語るのは、同社基礎化学品部の宮岸信宏次長。同事業では、廃プラを油化して得られた油をもとにして、エチレンやプロピレンなどさまざまな「リニューアブル化学品」の生産を目指すという。

 既存の石油精製・石油化学設備に用いるため、得られた油は原油相当の品質にする必要がある。このため、良質な油を得るのに適した廃プラを用いる方針。「ノウハウに絡む話」として具体的な種類は明かさなかったが、現在サーマルリサイクルに回されている廃プラが対象だという。

 事業の継続面で重要なのが、原料の廃プラをいかに確保するかだ。これについて、出光は廃棄物回収・処理などを手掛ける市川環境ホールディングス(千葉県市川市)、前田産業(長野県飯田市)との提携を進め、原料の安定調達を図る考えだ。今後、出光の千葉事業所(千葉県市原市)に油化ケミカルリサイクル装置を設計・建設し、25年度の商業運転開始を目指す。宮岸次長は「まずは油化技術から社会実装して、一歩ずつ前に進めることが大切」と力を込めた。

メタノール化の実証事業

 プラントメーカーの神鋼環境ソリューション(神戸市)と廃棄物回収・処理などを営む大栄環境(大阪府和泉市)、三菱ガス化学(東京都千代田区)らが取り組むのは、廃プラから樹脂などの原料となるメタノールを作る実証事業だ。「流動床式ガス化炉」という一般廃棄物の処理にも使われる炉に廃プラを投じて天然ガスに近い組成まで分解し、不純物を除去してメタノールを合成する。その品質は新品のメタノールと変わらないという。

 大きな特徴は、原料となる廃プラの種類や程度を選ばないこと。食品残渣(ざんさ)で汚れがある、金属やがれきが混在するなど、従来では再生が難しかった「雑多な廃プラ」を扱える。海洋プラス…

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