経済・企業独眼経眼

FRBが直面する「インフレ抑制か雇用維持か」という究極の選択 愛宕伸康

 ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は11月9日、スイス・チューリヒで行った講演で同連銀のアンケート結果を引き合いに出し、「将来のデフレを予想する人の割合が増えるなど、インフレの先行きに対する見方のバラツキが拡大している」と述べた。

 重要な指摘だが、米国の10月消費者物価の前年同月比は7.7%上昇とまだ高く、連邦準備制度理事会(FRB)がインフレ退治にきゅうきゅうとする中、マスコミにはほとんど取り上げられていない。

 金融政策は経済や物価に影響を与えるまで半年以上、場合によっては1~2年かかる。3月からの急速利上げで米国のインフレ率は来年後半にかけてプラス幅を縮小させると予想されるが、景気はそれに先行して悪化するだろう。ニューヨーク連銀のアンケートは、利上げの行き過ぎで景気が大幅に悪化し、そのうちデフレに陥るのでは、との懸念を示している。

 米国の景気循環日付を決める全米経済研究所(NBER)は、景気の「山」「谷」を判定する際、所得や雇用の指標を重視する。実際、非農業部門雇用者数の増減がマイナスになる、あるいは失業率が急速に上昇すると景気後退に陥る(図1)。「物価の安定」と「雇用の最大化」の二つの使命を与えられたFRBはインフレ抑制だけでなく、雇用を守るために景気後退も避ける必要がある。

 ニューヨーク連銀は10年金利を3カ月物金利が逆転すると景気後退になるとの経験則(図2)を利用し、1…

残り524文字(全文1124文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

4月30日・5月7日合併号

崖っぷち中国14 今年は3%成長も。コロナ失政と産業高度化に失敗した習近平■柯隆17 米中スマホ競争 アップル販売24%減 ファーウェイがシェア逆転■高口康太18 習近平体制 「経済司令塔」不在の危うさ 側近は忖度と忠誠合戦に終始■斎藤尚登20 国潮熱 コスメやスマホの国産品販売増 排外主義を強め「 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事