賃上げ機運高まるも、物価上げ幅を下回る公算大 斎藤太郎
名目賃金は増加傾向が続いているが、消費者物価上昇率が大きく高まったため、2022年4月以降は実質賃金の伸びがマイナスとなっている。
22年の春闘賃上げ率(厚生労働省調査)は前年(1.86%)から0.34ポイント改善し、2.20%となった。賃上げ率は4年ぶりに前年を上回ったが、1.7〜1.8%程度とされる定期昇給を除いたベースアップはゼロ%台にとどまった。
23年の春闘を取り巻く環境を確認すると、失業率が2%台半ば、有効求人倍率が1倍を大きく上回る水準で推移するなど、労働需給は引き締まった状態が続いている。また、法人企業統計の経常利益(季節調整値)は過去最高水準にあり、消費者物価は約40年ぶりの高い伸びとなっている。
賃上げを巡る環境を過去と比較するため、▽労働需給(有効求人倍率)▽企業収益(売上高経常利益率)▽物価(消費者物価上昇率)──について過去平均(1985年〜)からの乖離(かいり)幅を標準偏差で基準化してみる。
バブル崩壊後の約20年間はいずれの指標もほとんどの年でマイナスとなっていたが、アベノミクス景気が始まった13年にプラス圏に浮上し、18年まで改善傾向が続いた。景気が後退局面入りした19年、新型コロナウイルス感染症の流行が始まった20年は3指標がいずれも悪化した。しかし、その合計がマイナスとなることはなく、21年以降は急回復し、22年には3指標を合わせた上振れ幅がバ…
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週刊エコノミスト
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