国際・政治 米中間選挙
バイデン政権の議会運営は中間選前と変わらず困難 安井明彦
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トランプ前大統領が次期大統領選に出馬表明したが、バイデン大統領と同じく求心力の低下や高齢への不安も抱える。
手札は選挙前に立法化した公約の実施
米国の中間選挙(11月8日投票)は、民主党が善戦し、民主・共和両党が拮抗(きっこう)する結果となった。11月21日現在では連邦議会上院で民主党が過半数を確保し、下院では共和党が過半数となったものの、議席数の差はわずかだ。米国は2024年の次期大統領選でどのような政策を求め、誰をリーダーに選ぶのか。模索の2年間が始まった。
中間選挙は「共和党の大勝」という大方の予想を裏切り、すぐには上下両院の多数派が決まらない大接戦となった。米国で大統領が最初に迎える中間選挙では、その所属政党が大きく議席を減らす傾向にある。バイデン大統領の民主党にとって、まれにみる僅差となった選挙結果は、直前の予想だけでなく、歴史のパターンをも覆す善戦だった。
バイデン氏の鼻息は荒い。投票日翌日の11月9日に行われた記者会見では、多数党の行方が決まっていなかったにもかかわらず、「私たちが勝ったという事実は……」と口を滑らせ、選挙後の政策運営についても「(これまでと)違うことを行うつもりはない」と言い切った。
しかし、善戦は勝利ではない。民主党は上院で1議席を積み増す可能性があるが、下院では議席を減らした。これまでのバイデン氏の取り組みが圧倒的に支持されたわけではなく、民主党による議席の大幅増で議会運営が劇的に楽になったわけでもない。
中間選挙が終わると同時に、政治の焦点は24年の大統領選挙に移る。世論が二分化された米国で、いかに支持を高めていくのか。バイデン氏の最大の課題は、経済運営への支持の回復である。中間選挙では、高インフレがアキレスけんとなった。出口調査でも、インフレを重くみた有権者の7割が、共和党の候補者に投票している。
「大きな政府」裏目に
インフレ対策の評価では、バイデン氏が掲げる「大きな政府」が裏目に出た。バイデン氏は新型コロナウイルス禍からの「より良い復興」をスローガンに、復興支援にとどまらず、格差是正や気候変動対策などでも、政府が大きな役割を果たす方針を打ち出してきた。しかし、有権者には大きな政府の恩恵が伝わっていない。むしろ、急速な景気回復を支えた積極的な財政出動が、高インフレを招いた元凶として批判されているのが現実だ。
米国には、危機の際に高まった政府への期待が失望に変わり、「小さな政府」への揺り戻しが起こってきた歴史がある。08年のリーマン・ショックの後、過激に小さな政府を求めるティー・パーティー(茶会)運動が盛り上がったのが典型だ。同じような揺り戻しが起きれば、バイデン氏の再選には強い逆風になる。
バイデン氏にとっては、いかに有権者に大きな政府の恩恵を実感してもらえるかが勝負の分かれ目だ。議会運営の難しさは変わっておらず、限界…
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週刊エコノミスト
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