教養・歴史小川仁志の哲学でスッキリ問題解決

沈黙に耐えられず、つい無意味なことを言い後悔します/154

ジョン・ケージ(1912~1992年)。アメリカの音楽家、思想家。実験音楽家として、前衛芸術や思想界に大きな影響を与えた。著書に『サイレンス』などがある。(イラスト:いご昭二)
ジョン・ケージ(1912~1992年)。アメリカの音楽家、思想家。実験音楽家として、前衛芸術や思想界に大きな影響を与えた。著書に『サイレンス』などがある。(イラスト:いご昭二)

Q 沈黙に耐えられず、つい無意味なことを言い後悔します

 人と話している時、会話が途切れた際の沈黙に耐えられません。つい無意味なことを言ってしまい後悔しています。どうすればいいでしょうか?(銀行勤務・40代女性)

A 沈黙は無音ではなく、同時に音が存在する状態なのです

 会話の際の沈黙、あるいは何も音がない状態に耐えられない人っていますよね。私もかつてはそうでした。だから適当なことを話したり、音楽をかけたりと、常に音で静寂を埋めていた記憶があります。

 でも、今回紹介するジョン・ケージの思想を知ってからは、少し変わりました。ケージはアメリカの音楽家です。でも、思想家としてもよく知られています。何しろ彼の作る音楽は自らが「実験音楽」と呼ぶように、まさに実験的で前衛的なもので、非常に哲学的だからです。

 そのケージが重視したのが、「沈黙」でした。彼の代表作ともいえる「4分33秒」は、その象徴です。楽譜では4分33秒という演奏時間が決められているだけで、オーケストラは一切演奏をすることはありません。ただ、その時間偶然生じた音、例えば聴衆のせきや雑音が鳴り響くだけです。

沈黙と呼ばれる音源

 ここでケージがいいたかったのは、沈黙とは無音ではなくて、偶然生じた音が存在している状態だということです。その意味では、いかに沈黙を作り出そうとしても、それは私たちには不可能だということがわかります。だからケージは、…

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