沈黙に耐えられず、つい無意味なことを言い後悔します/154
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Q 沈黙に耐えられず、つい無意味なことを言い後悔します
人と話している時、会話が途切れた際の沈黙に耐えられません。つい無意味なことを言ってしまい後悔しています。どうすればいいでしょうか?(銀行勤務・40代女性)
A 沈黙は無音ではなく、同時に音が存在する状態なのです
会話の際の沈黙、あるいは何も音がない状態に耐えられない人っていますよね。私もかつてはそうでした。だから適当なことを話したり、音楽をかけたりと、常に音で静寂を埋めていた記憶があります。
でも、今回紹介するジョン・ケージの思想を知ってからは、少し変わりました。ケージはアメリカの音楽家です。でも、思想家としてもよく知られています。何しろ彼の作る音楽は自らが「実験音楽」と呼ぶように、まさに実験的で前衛的なもので、非常に哲学的だからです。
そのケージが重視したのが、「沈黙」でした。彼の代表作ともいえる「4分33秒」は、その象徴です。楽譜では4分33秒という演奏時間が決められているだけで、オーケストラは一切演奏をすることはありません。ただ、その時間偶然生じた音、例えば聴衆のせきや雑音が鳴り響くだけです。
沈黙と呼ばれる音源
ここでケージがいいたかったのは、沈黙とは無音ではなくて、偶然生じた音が存在している状態だということです。その意味では、いかに沈黙を作り出そうとしても、それは私たちには不可能だということがわかります。だからケージは、…
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週刊エコノミスト
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