実在の人物をモデルにシベリアの強制収容所の過酷な日々描く 野島孝一
有料記事
映画 ラーゲリより愛を込めて
第二次世界大戦後、60万人を超える日本人が、ソ連軍によってシベリアの強制収容所(ラーゲリ)に収容され、過酷な労働に従事させられた。この映画は、厳冬期にはマイナス40度にもなる収容所で、生きる希望を捨てず、仲間を鼓舞し続けた山本幡男(はたお)さんの実話に基づく。
山本幡男さんを演じたのは、二宮和也。だんだんやせ衰えていく演技が必要とされるうえ、精神的な負担も大きかったと思われ、よくぞこの難しい仕事を引き受けたと感心した。
旧満州のハルビンで、結婚披露宴に呼ばれた山本さんと、妻のモジミ(北川景子)。ごちそうを食べる4人の子どもたちの幸せそうなシーンから映画は始まる。その平和なシーンは、あっという間に終わり、ハルビンはソ連軍の爆撃を受ける。
山本は家族を日本に帰し、ハルビンにとどまってソ連軍に抑留される。ラーゲリでの生活と山本の様子は、主に共に抑留された松田(松坂桃李)の口から語られる。松田は戦闘中に足がすくんだ臆病者として自分が許せない男だ。
厳しい寒さ、重労働、粗末でわずかしかない食べ物などが日本人収容者を苦しめ、さらに旧日本軍の階級があつれきを生んだ。
山本はロシア語が堪能だったが、一等兵だったので、軍曹の相沢(桐谷健太)にいびられ続けた。だが、山本は分け隔てなくラーゲリの仲間たちを励まし元気づけた。そんな山本はソ連軍に目をつけられ、何度も営倉入りにな…
残り649文字(全文1249文字)
週刊エコノミスト
週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める