認知症の母親を介護する一人娘のSNS動画に270万人が共感 小林知代
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米国の認知症患者数は年々増加している。国際アルツハイマー病協会(ADI)によると、現在650万人が認知症を患い、2050年には患者数はその倍になるという。患者の介護や、どう共生するかは、米国社会を揺るがす大きな問題になっている。そんな中で、動画投稿アプリ「TikTok」(ティックトック)に投稿された認知症の母を介護する動画が大きな反響を呼んでいる。
6年前のこと、当時29歳のジャクリンさんはニューヨークでショービジネスの仕事を得て、充実した生活を送っていた。ところが、ロサンゼルスに住む母親の友人から「行動が尋常でない」と連絡を受け、母が認知症を患っていたことを知る。住宅ローンの支払いを忘れ、シロアリによる家屋の被害も気にせず、自宅へ帰る道も忘れる。自立した生活ができなくなりつつある母の現実を目の当たりにした一人娘のジャクリンさんは、ロスに引っ越し、介護に専念することを決める。
SNSに救い求め
当初は孤独な介護生活に打ちひしがれ、同じ状況に身を置く同年代の人に会うこともなかった。母をデイサービスに通わせたり、地元の介護人サポートグループに顔を出したりもしたが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出自粛により、外の世界と接触のない生活を強いられた。多くの人々が、SNS(ネット交流サービス)に救いを求めたように、ジャクリンさんは母親との日々の生活をティックトックで紹介し、自分自身の孤独に耐えようとした。それが大きな反響を呼んだ。
200人あまりだったフォロワーは、今では6万5000人にまで増えた。激励のメッセージは何通も届き、皆それぞれの立場から彼女を励まし、身内のケアに関する情報交換を行った。
特に共感を呼んだ動画は、日々の介護で「小さな勝利をおさめる」シーンだった。風呂上がり…
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週刊エコノミスト
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