外資政策の不備を反省してみせた第3次習指導部の内情 岸田英明
「(中国内での外商=外国企業=投資を一部の規制・禁止業種を除き全て認める)ネガティブリスト制度の実施は不完全で、国内企業と外資の差別的な待遇があるほか、外資の投資権益保護も不十分だ……」
第3次習近平指導部発足直後の10月下旬に開かれた、中国の全人代(日本の国会に相当)常務委員会における、陳竺副委員長の報告だ。中国で当局者が自ら政策の不備を詳しく語り、それをメディアに報じさせるのは珍しい。
報告は「外商投資法」(2020年1月施行)の執行状況に関し、当局の調査結果を伝えたもの。▽リストの記載内容が不明瞭で、外資と窓口当局の理解が一致しないことがある、▽投資安全審査制度の内容が不明瞭で、(あるプロジェクトが、審査を要するか、または投資が可能かを)外資が事前に判断できない、▽外資が入札や政府調達で差別され、政府支援や補助金受領の機会に制限がある、▽政策の安定性や透明性、予見性が低い──といった問題が報告された。
また強力な新型コロナウイルス感染症の防疫措置に関する報告では「多国籍企業の本社と中国の投資先企業の(直接の)意思疎通が減り、(外資)企業の世界戦略における中国市場の重要性に影響を及ぼしている(=重要性が低下している)」と懸念した。
これらを踏まえ、陳氏は「より高レベルの開放型経済の構築を目指し、外資投資環境の改善を続けたい」とする。ただしさすがにその権限はなく「ゼロコロナ政策」見直しまでは踏み込んでいない。
報告に先立つ10月25日、中国政府は「製造業を重点とする外資の投資増加、既存投資の安定、投資の質の向上促進に関する若干の政策措置に関する通知」を公布、ネガティブリスト制度の実施を深化させ、土地使用や環境規制対応など外資支援の強化方針を示した。同28日には「外商投資奨励…
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週刊エコノミスト
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