米中対立懸念の中で中国が外資重視を打ち出した事情 真家陽一
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「法に基づいて外商投資の権益を保護し、市場化、法治化、国際化した一流のビジネス環境を整備する」。10月16〜22日に開催された中国共産党第20回党大会の初日に行った報告において、習近平国家主席はこう表明した。
党大会以降、中国は外資系企業を重視する姿勢をあらためて打ち出している。中国政府は10月25日、「製造業を重点とする外資の投資拡大・安定・質の向上の促進に関する政策措置」を公布。外資系企業の投資を制限・禁止する分野を示した「ネガティブリスト」以外の分野では中国企業と外資系企業を平等に扱うとした。
また、内国民待遇を高い基準で実施し、外資系企業が入札・政府調達などで中国企業と平等な待遇を享受する方針も掲げた。さらに、新型コロナウイルス対策を確実に行った上で、外資系企業の経営者や技術者、その家族の出入国を円滑化することも提起した。
10月28日には「外商投資奨励産業目録(2022年版)」を公表。現行の20年版から239項目が新規追加、167項目が改定され、外商投資の奨励範囲が拡大した。業種別では先進製造業と現代サービス業、地域別では相対的に発展の遅れる中西部地域に外資系企業の投資を呼び込みたい意向だ。
こうした政策の背景には、ビジネス環境の改善に対する外資系企業からの要望がある。
例えば、進出する日系企業などで構成する中国日本商会は、課題解決への建議をまとめた「中国経済と日本企業白書」を10年から発行、7月29日公表の22年版では次のように指摘する。「ネガティブリストでは制限されていないが、他の関連法令によって外資への開放分野が事実上制限されている」「中国の政府調達では依然として国産品が主であり、輸入製品に対する制限や排除が行われている」
また米国企業による上海米国商会は、中…
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週刊エコノミスト
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