高まる早期辞任求める声 「人事好き」首相の次の手は 中田卓二
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岸田文雄首相が年末年始に内閣改造・自民党役員人事に踏み切るのではないかという観測が広がった。首相は早々に否定したが、内閣支持率の低迷や閣僚の相次ぐ辞任で政権の前途は不透明感を増している。リスク覚悟で打って出る可能性は消えていない。
「早く辞めて」が43%
11月19、20両日に毎日新聞が実施した全国世論調査で、岸田首相にいつまで首相を続けてほしいかを尋ねた。結果は「早く辞めてほしい」が43%で最も多く、「再来年9月の自民党総裁任期まで」(31%)、「できるだけ長く続けてほしい」(14%)などを上回った。
菅義偉氏が首相だった昨年5~7月の計3回の調査では、選択肢の文言はやや異なるものの「早く辞めてもらいたい」がトップになることはなかった。当時は総裁選が9月に迫っており、「総裁の任期いっぱい」と「早く辞めて」に回答が分散したとみられる。
今回は総裁選までまだ2年近くあり、衆目が一致する「ポスト岸田」候補がいるわけでもない。そんな中で早期辞任を求める世論が高まったことは、首相にとって痛手だろう。さすがに内閣支持層では「再来年9月」(43%)と「できるだけ長く」(42%)で8割を超えたが、支持率自体が低い(31%、不支持率は62%)ので楽観はできない。
寺田稔前総務相が「政治とカネ」の問題で更迭されたのを受け、毎日新聞は22日付朝刊で「首相は内閣改造・自民党役員人事を行う検討に入った。当初予算案編成後の12月末から2023年1月の通常国会召集までの間での実施を視野に入れている」と特報した。朝日新聞も翌日の朝刊で「首相が、早ければ年明けにも内閣改造と党役員人事を行うことを検討していることが22日、わかった」と報じた。いずれも複数の政権幹部への取材に基づいている。
これに対し首相は24日、記者団の質問に「そういう報道は承知しているが、私自身、そうしたことはまったく考えていない。今は国会に専念しなければならない」と答えた。検討している事実はないと否定したのだが、「今は国会に専念」という留保も付けた。
かつて7年8カ月にわたる長期政権を築いた佐藤栄作元首相は「内閣改造をするほど首相の権力は下がり、解散をするほど上がる」と語ったという。佐藤は在任中、衆院を2回解散し、いずれも自民党を勝利に導いた。
この格言は岸田首相にも当てはまるだろうか。
首相は8月、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の問題をリセットするため、9月が有力視されていた内閣改造・自民党役員人事を8月10日に前倒しした。ところがその後、山際大志郎前経済再生担当相や自民党の萩生田光一政調会長らと教団側との関わりが次々に発覚。人事は政権浮揚効果を生まなかったばかりか、首相はこの問題に翻弄(ほんろう)され続けている。首相が掲げた「政策断行内閣」の看板はすっかりかすんだ。
首相は就任間もない昨年10月に衆院を解散したが…
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週刊エコノミスト
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