経済・企業

竹増貞信・ローソン社長「売上高はコロナ前を回復。冷凍食品や総菜の比率が上昇」

 2023年の個人消費の見通しをコンビニ大手のトップに聞いた。(聞き手=稲留正英、和田肇・編集部)

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── 2022年度上期の決算では業績がかなり回復している。

■インバウンド(訪日外国人客)需要がまだ戻らず、リモートと出社のハイブリッド型の働き方が続く中で、今年の10月にようやく国内コンビニエンス事業は売上高ベースで19年10月対比プラスになった。20年秋からグループで改革実行委員会を立ち上げ、店舗のハード面のありようや商品・サービスの刷新などを検討し、100店舗ぐらいで実証事業を行ってきた。無印良品ともタイアップし、同社の商品を置いたりしている。今年6月からテレビCMも含めて大きなキャンペーンも打ってきた。そうした取り組みがようやく数字になって表れてきたのだと思う。

── 売り上げの中身もコロナ前からかなり変わってきたのか。

■冷凍食品や総菜の比率が上がっているし、店舗の厨房で作った商品やデリバリーも伸びている。

── 足元では客単価も上がっているようだが、値上げが影響しているのか。

■値上げの部分はまだそれほど大きくない。買い上げ点数が増えている。

── コロナ後の日本人の消費スタイルの変化をどう見るか。

■中長期的には、人口減少、少子高齢化という中で、小売市場が縮小するといわれている。そうした中、コンビニ、外食産業、スーパー、ドラッグストアなどの業界の垣根がなくなっていく。ローソンも垣根をどんどん越えていかないといけない。例えば、コンビニでの医薬品販売については、まだ規制の壁がある。本当の便利さとは何なのかを常に考えながら、ローソンの店の価値をどう高めていくのか考えていく。

── コンビニ業界は出店数がすでに飽和状態にあるといわれる。

■人口が減る中で、店舗数をこれ以上大きく増やす必要はないと思う。コンビニは「人口が2000人いれば店舗を出せる」といわれる。必要顧客数が最も少ない小売店だ。だからローソンは店舗の機能をもっと充実させて、最後の砦(とりで)として街を支えていきたい。

店の裏側をデジタル・AI化

── 23年は物価高の影響がかなり出てくるのか。

■影響は大きいだろう。電気代も高止まりしている。ローソンではコロナ禍直前から「店利益基軸経営」を掲げ、フランチャイズと一緒になって取り組んでいる。電気代の高止まり、人手不足、インフレの影響があっても、店利益が下がらない経営をやっていくことが、23年度の課題だ。

── 無人店舗には力を入れるのか。

■例えば、IT企業が入っているビルなど一部では無人にできるところもあるが、店舗を無人にしようとは思っていない。ITビルから一歩外に出れば、いろいろな人が住んでいて、いろいろな人がコンビニを使っている。私は人にしかできないことが必ずあると思っている。店の裏側をいかにデジタル・AI化するかだ。最少限の人で最大のホスピタリティーを出したい。そういう店作りをローソンで進めようとしている。


 ■人物略歴

たけます・さだのぶ

 1969年大阪府出身。大阪大学経済学部卒業後、1993年4月三菱商事入社。社長秘書などを経て、2014年ローソン副社長、16年6月から現職。


週刊エコノミスト2022年12月20日号掲載

インタビュー 竹増貞信・ローソン社長 売上高はコロナ前を回復 冷凍食品や総菜の比率が上昇

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