教養・歴史 鎌田浩毅の役に立つ地学

ハワイ島の隣接2火山の同時噴火は38年ぶり/127

ハワイ・マウナロア噴火/上

 米国ハワイ島にあるマウナロア火山が11月27日、噴火を開始した。標高4169メートルのマウナロアは世界最大の活火山で、ハワイ火山国立公園内にある。1984年以来、実に38年ぶりの噴火で、噴煙は高度1万2000メートルまで達した。山頂のカルデラ(巨大な凹地)で噴火が始まった後、北東に伸びる「リフトゾーン」と呼ばれる細長い割れ目地形に沿って拡大し、亀裂から溶岩を出し続けている。

 溶岩の噴泉は高さ60メートルまで上がり、警戒レベルが「勧告」から最高の「警戒」に引き上げられた。マウナロア火山では今年6月から地下で地震活動が盛んになり、10月には山頂付近への立ち入りが禁止されていた。

 マウナロア火山の噴火は、最初に記録された1843年以降で34回目に当たるが、前回の1984年から今回までの間隔が最も長い。地下ではマグマが絶えず供給されているので、静穏期が長い後の噴火は規模が大きくなる可能性がある。すでにハワイ島のヒロ空港からの航空便休止など交通機関に影響が出ており、今後の噴火の動向によっては火山性ガスや火山灰の被害が拡大する恐れもある。

 米国立気象局ホノルル支部は、全島を対象に降灰警報を発令した。火山灰は車や植生だけでなく上下水道や電力システムに被害を及ぼすことがある。また火山性ガスに含まれる二酸化硫黄などの有害物質によって呼吸器疾患が悪化するほか、大気汚染を引き起こすことも懸念されている。

観測体制に懸念

 これまでマウナロア火山の噴火では、「ペレーの毛」と呼ばれる火山ガラスの細い糸が大量に空中を浮遊した。そのため、当局は今回の噴火でも、呼吸器疾患を持つ人は屋内にとどまり、屋外ではマスクで口と鼻を覆うよう呼び掛けている。

 マウナロア火山の34キロメートル東には、2021年9月から噴火が続くキラウエア火山がある。ハワイ島で隣接する二つの活火山が同時に噴火するのも1984年以来で、キラウエア火山の2018年噴火では溶岩が住宅地に流れ込み700棟もの家屋が損壊し…

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週刊エコノミスト

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