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教養・歴史 鎌田浩毅の役に立つ地学

なぜ太平洋プレート中央に火山があるのか/128

ハワイ・マウナロア噴火/下

 世界最大規模の火山である米国ハワイ島マウナロア火山が噴火の消長を繰り返している。世界の大きな火山は地球表面を覆うプレートの境界にあることが多いが、ハワイは太平洋プレートの中央に位置している。なぜこの場所に世界最大規模の火山が存在するのかは、地学の重要なトピックスであり、地球深部の状況から解説しよう。

 今から500万年ほど前、水深5000メートルの太平洋の海底でマグマが突然噴き出した。水に触れて固まった溶岩は高まりを作り、水面の上に出た。海底から積み上げると、1万メートルもの高さをもつ巨大な火山である。火山島ハワイはこうして誕生した。

 ハワイ島は一見すると、太平洋プレートに乗っているように見えるが、実はそうではない。マントル深部から来たマグマが太平洋プレートを貫いてできた「ホットスポット」と呼ばれる火山である。

 太平洋にはこの他にも、ホットスポットによってできた火山島が数多くある。これらは鎖でつながったような列をなし、ハワイ諸島と天皇海山列(ロシア・カムチャツカ半島近くからハワイ諸島近くまでの海山群)となった。なお、海山とは火山島が沈降した海底の山である。

 火山列の最も東にあるハワイ諸島は8個ほどの島からなり、それぞれ活動した年代が異なる。ハワイ島の西にはマウイ島、モロカイ島、オアフ島と連なり、その順に活動年代が古くなる。ハワイ諸島と天皇海山列の鎖は、地下から断続的にマグマが出て、火山島が一つずつ生まれたことを意味する。

列状に連なる島

 地殻と硬いマントルからなるプレート(リソスフェア)は、地球表面上をゆっくりと動いている。一方、その下にある軟らかいマントル(アセノスフェア)には、プレートを突き破るほどの威力でマグマが噴出する固定した場所がある。太平洋プレートは北西方向へゆっくりと動いており、動いたプレートをマグマが突き破ることを繰り返したため、地球表面上では列をなすように火山島が次々に生まれたのである(図)。

 ホットスポット上にできた火山列の距離は全長6000キロメートルに及ぶ。火山島及び海山の位置と年代を見ると、太平洋プレートはほぼ一定のスピードで動いたことが分かる。その速度は年間10センチメートルほどで、人間の指の爪が伸びる速さに相当する。

 マウナロア火山のマグマは、深さ2900キロメートルの下部マントルから高温物質として上昇してきた。マントル内部で高温の岩石が上昇する「ホットプルーム」と呼ばれる現象である(本連載の第39回を参照)。上昇する岩石はマントル内では固体のままだが、地表に近づいて圧力が下がると溶けて液体のマグマになる。このマグマはプレート内部にマグマだまりを作りながら上昇し、最後に地表で噴出する。これが世界最大火山を作り出した営みなのである。


 ■人物略歴

かまた・ひろき

 京都大学名誉教授・レジリエンス実践ユニット特任教授。1955年生まれ。東京大学理学部卒業。専門は火山学、地質学、地球変動学。「科学の伝道師」を自任。理学博士。


週刊エコノミスト2022年12月27日・2023年1月3日合併号掲載

鎌田浩毅の役に立つ地学 ハワイ・マウナロア噴火/下 プレート中央の世界最大火山/128

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