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教養・歴史 鎌田浩毅の役に立つ地学

意外と知らない?大陸が移動する理由

地球の表面はプレートと呼ばれる11枚ほどの厚い岩板で覆われている。プレートは水平方向に移動し、地震や火山活動などのさまざまな現象を引き起こす。

1960年代に確立した「プレート・テクトニクス」と呼ばれる理論は、こうした地殻変動を統一的に説明し、ヒマラヤ山脈を隆起させる原因なども見事に解き明かした。

だが、地殻の下にあるマントルなど地球深部が、プレートの動きにどのように影響を及ぼしているかは分かっていなかった。

これを説明する理論が打ち立てられたのが20世紀の終わりであり、「プルーム・テクトニクス」と呼ばれている。プルームとは英語で「もくもくと上がる煙」の意味である。

水平移動した海洋のプレートは、大陸のプレートの下へ沈み込み、マントルの中を深く進んでいく(図)。

深さ670キロまで達したプレートは、いったん沈み込みを停止し、プレートの残骸となって成長する。その後、残骸がある程度大きくなると、マントル内部をさらに下降し、最後に深度2900キロにある「核」の表面へ達する。

この現象は、低温で巨大な塊が下降する形状から「コールドプルーム」と呼ばれる。

さて、コールドプルームが核の表面に達すると、その反作用として核から地表へ向けて高温のプルームが昇り始める。核は地球の内部で最も温度が高く、中心(内核)は6000度以上、また上層(外核)でも5000度もある。

上昇するプルームは、核から熱を受けて高温になるので「ホットプルーム」と呼ばれる。

直径が2000キロにもおよぶ巨大な高温上昇流の誕生である。こうしてプルームが下降と上昇を繰り返しながらマントル物質を循環させ、プレートも動かしているのである。

変動は数億年単位

地球史を見ると、コールドプルームは数億年に約1回マントルを下降する。

コールドプルームの下降に応じて、ホットプルームも数億年おきにマントル内を上昇する。これが深さ670キロにある境を突き抜けて地表まで達すると、大規模な異変が生ずる。

ホットプルームは火山の巨大噴火や、大陸の分裂を引き起こす。たとえば、南太平洋にはホットプルームの名残である大規模な火山活動の跡がある。

また、アフリカ大陸の地下にあるホットプルームは、いずれ大陸を分裂させる原動力となる。

地球は半径が6400キロあり、マントルは地球の体積の8割を占める。地球全体の動きを知るには、マントルの挙動が重要なカギを握る。

プレート・テクトニクスは数百キロより浅い場所で起きる現象を統一的に説明することに成功した。それに対してプルーム・テクトニクスは、深さ2900キロまでのマントル内部で物質がどう循環するかを明らかにした。

これによって、地球を「まるごと」捉えることが可能になったのである。

(本誌初出 地球の表面が動くワケ マントル内部で「プルーム」上下/39 20210216)


 ■人物略歴

かまた・ひろき 京都大学大学院人間・環境学研究科教授。1955年生まれ。東京大学理学部卒業。「科学の伝道師」を自任し、京大の講義は学生に大人気。

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