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詐欺まがいの不正が横行する中国「私募ファンド」の実態

スタートアップ企業が集う深圳。私募ファンドの健全化は発展に欠かせない(Bloomberg)
スタートアップ企業が集う深圳。私募ファンドの健全化は発展に欠かせない(Bloomberg)

中国証券監督管理委員会(証監会)は今年1月、私募投資基金(私募ファンド)への監督を強める新たな規定を発表した。

一定以上の資産を持つ適格投資家200人以下を対象にする私募ファンドは昨年末時点で9万6800本、登録された基金管理会社は約2万4600社ある。

資産規模は15・8兆元(約254兆円)で、17・8兆元(約286兆円)の公募ファンド(証券投資信託)と肩を並べる(20年9月末時点)。

私募ファンドは主に、私募証券投資基金(資産規模3・67兆元)とプライベートエクイティ(PE)ファンド(同9・42兆元)、ベンチャーキャピタル(VC、同1・54兆元)に分けられる。

7年ぶりの新規定

私募証券投資基金はもともと、証監会などの許可なく法律上のグレーゾーンで証券投資信託のような業務を営んで2000年代前半に規模が拡大し、問題化した。

玉石混交だが優秀なファンドマネジャーが存在したものもあり、現在では一定の条件を満たすファンドは自主規制機関の中国証券投資基金業協会に登録するようになった。

一方、PEとVCは1980年代半ばに科学技術支援の観点から政府主導で作られたが、発展したのは90年代後半からだ。

規制当局の証監会は14年に私募ファンド業務に関する弁法(行政上のルール)を発表し、適格投資家の要件などを具体的に定めた。

今回は約7年ぶりの重要規定の発表ということになる。

当局が監督強化に動いた背景には、PEとVCが銀行の迂回(うかい)融資(いわゆるシャドーバンキング)に利用されたほか、詐欺まがいの事件がここ数年相次いだことがある。

例えば、金融や不動産などの複合企業体である上海阜興実業集団(阜興グループ)の事件では、グループ内の私募ファンドが、多くは実態のない関連会社の株式などに投資する形で、投資家から365億元(約5900億円)をだまし取っていた。

新規定は、こうした関連会社取引や資金流用といった禁止事項を確認したうえで、業務改善や処罰規定を詳しくした。また、未登録の場合は基金管理会社を名乗れないことにし、登録している場合も名称に「私募基金」などの文字を含めることにした。

適格投資家については、資格条件を満たさない投資家に資金を融資するなどして、条件を満足させてはならない。また、ファンドの持ち分を分割して多数の人に譲渡するなどして、投資家の人数制限を回避することも明示的に禁じた。

ただ、当局の認可を受けて中国本土の株式や債券を売買できる「適格外国機関投資家(QFII)」や人民元建ての「人民元適格外国機関投資家(RQFII)」は適格とみなされ、背後にいる最終投資家まではチェックしない。

これにより、長期資金を提供する投資家の範囲がこれまでの社会保障基金などから拡大した。

今年、新たな5カ年計画(21~25年)の期間に入った中国は、発展戦略の一つに産業チェーンの再構築・強化を掲げる。

ハイテク部品・装置といった分野での自前の技術革新が欠かせず、そこでは金融面でPEやVCが重要な役割を担う。私募ファンド業界を健全化し、こうした発展戦略に役立てる意図もうかがえる。

(神宮健・野村総合研究所金融イノベーション研究部シニア研究員)

(本誌初出 私募ファンドの監督強化へ “詐欺まがい”の不正横行で=神宮健 20210216)

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