半導体市場が落ち込んでも、長期で伸びるこれだけの理由 豊崎禎久
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2023年の半導体市場はマイナス成長となるが、データセンターや電気自動車の需要は手堅く伸びていく。その一方で半導体メーカーの優劣が変わる可能性がある。
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世界半導体市場統計(WSTS)が2023年の半導体市場の見通しを対前年比4.1%減の5566億ドルと発表したが、これはかなり楽観的な予想だと考えられる。筆者はより悪化するシナリオを考えており、23年の世界半導体市場は12%減になると予想している。
現在の半導体を取り巻く環境は良くない。半導体の需要をけん引するのは、アプリケーション(応用製品)である電子機器の需要だが、これまでけん引役だったスマートフォンの需要が落ちている。
次に、新型コロナウイルス感染症は完全に終息していないが、ある程度落ち着いてきた。リモートワークをやめている企業が増え、コロナ特需のパソコンの需要も一服している。また、ウクライナ戦争に起因して原材料費が上がり、製品価格も上がっている。世界的なインフレ加速で消費者の電子機器の買い控えも起こっている。
さらに、一番大きな要因は米中対立で、中国以外のメーカーが巨大な中国市場にアクセスできていない。中国並みに半導体の成長を促す市場は他にないため、中国市場が閉ざされると半導体の消費は増えない。一方、中国はゼロコロナ政策によるロックダウンで、工場の製造量が落ちている。仮に需要があっても供給できないため、電子機器の生産が増えず、半導体の消費量も増えない。
23年は半導体の成長に楽観的な要素はほとんどない。
手堅いパワー半導体
しかし、もう少し視野を広げれば、新たな景色も見えてくる。23年は新たな景色への胎動も始まってくるだろう。半導体市場は短期的には落ち込んでも、長期的には間違いなく伸びていく。
まず、これから世界経済がリセッション(景気後退)に入ると、20世紀初頭の世界恐慌時の米国と同様にニューディール政策のようなグリーンインフラ投資が推進されるだろう。中国は関係国も含めて巨大経済圏構想「一帯一路」を推し進めるが、中国に対抗するように米国を中心とした自由主義圏の国はASEAN(東南アジア諸国連合)への投資を行っていく。
この場合のインフラは、道路などではなくデジタルインフラであり、スマートシティーの建設が進む。ここでは、ガバメントクラウド(政府や自治体が運用するクラウド…
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週刊エコノミスト
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