近代日本の文学者たちによる言葉を巡る群像劇 SNSやAIも登場 濱田元子
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舞台 青年団「日本文学盛衰史」
森鷗外、田山花袋、二葉亭四迷、島崎藤村、夏目漱石、石川啄木、樋口一葉、正岡子規、与謝野晶子……。
読んだことはなくても、教科書ではおなじみのそうそうたる文学者たちが登場する。といっても、文学の堅苦しい「お勉強」ではない。
明治の近代日本文学の黎明(れいめい)期から、大正、昭和まで、文学者たちが内面を語るための新しい日本語と表現を模索する苦悩を、現代の風俗や世相の中でポップに、そしてアイロニカルな笑いを交えて描く群像劇である。
伊藤整文学賞を受賞した高橋源一郎の同名小説(講談社文庫刊)を原作に、劇作家・演出家の平田オリザが舞台化して、高く評価されたのが2018年。鶴屋南北戯曲賞も受賞した。今回は再演となる。
舞台装置は大きな畳敷きの部屋。4場構成は、1894(明治27)年の北村透谷の葬儀、1902(明治35)年の子規の通夜の晩、09(明治42)年の四迷の葬儀の午後、16(大正5)年の漱石の葬儀の夜という、文学史の節目に設定。弔問に訪れる、鷗外や花袋、藤村、一葉らが、文学上の問題から世情まで語る言葉の中に、それぞれが抱える葛藤や時代が浮かび上がってくる仕掛けだ。
高橋の原作にたまごっちが出てきたのと同様に、平田は今の時代を反映するツイッターやLINE、政治を巡る問題や演劇人のパロディーを軽やかに織り込んでいく。漱石がLINEで猫のスタンプを送ったり、花袋…
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週刊エコノミスト
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