コロナ政策緩和で迷走する習政権 外交本格化も米国との競争余裕なし 金子秀敏
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中国の習近平国家主席が2022年12月7〜9日、サウジアラビアを訪問した。ペルシャ湾岸6カ国の湾岸協力会議(GCC)首脳らとの会議で「石油、天然ガス貿易の人民元決済」を提案。サウジアラビア首脳とは「包括的戦略パートナーシップ協定」を結び、華為技術(ファーウェイ)の5G通信設備建設も合意した。
習近平外交が本格的に再開した。11月14日、インドネシアでバイデン米大統領と会談し「衝突回避」を確認し、サウジ訪問では米ドル支配に対抗する人民元覇権の戦略目標を打ちだした。
12月6日、バイデン大統領はアリゾナ州フェニックスの「台湾積体電路製造」(TSMC)新工場を商務長官とともに訪れ「米国に製造業が戻った」と台湾に感謝する演説をした。回路線幅5ナノメートルの先端半導体は、対中デカップリング戦略の象徴だ。
第3期習政権で米中対立は続く。だが中国はまだ新型コロナウイルスの感染が止まらない。経済が急速に悪化し、外国企業は中国から東南アジアへ移転を急ぐ。中国のネット上では海外移民の検索件数が急上昇した。習政権は足元が揺らいでいる。
習氏は12月6日、党中央政治局会議を開き、経済安定化のため都市封鎖や強制隔離など「ゼロコロナ」政策の緩和を容認した。翌日、政府の国務院共同防疫機構がPCR検査の回数削減や陰性証明なしの旅行許可など10項目の具体策「新10条」を発表した。
外遊出発で責任うやむや
もともと「ゼロコロナ」は封鎖と隔離を柱とする感染封じ込め政策で、習氏が提唱したために批判することもやめることもできず成果の出ないまま3年間続いていた。習氏は「新10条」発表当日サウジに向かい「ゼロコロナ」に固執した責任をうやむやにした。
習氏が「ゼロコロナ」緩和に転換する政治的リスクは高い。それでも封鎖や強制…
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週刊エコノミスト
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