銀行理財商品に市場の洗礼 投資家教育の強化も必要 神宮健
中国では昨今、銀行の理財商品(資産運用商品)が、資本市場の価格変動の洗礼を受けている。
理財商品は2010年代、「シャドーバンキング(影の銀行)」の入り口となっていた。顧客の資金を定期預金から高金利の理財商品に乗り換えさせ、その資金を複数の金融機関を介した複雑な取引を通して不動産プロジェクトなどに流す。こうして銀行は、比率規制などで通常の融資ができない分を代替していた(迂回(うかい)融資)。
理財商品の多くは元本収益保証商品ではなかったが、銀行に対する信頼が強い中、社会全体として元本収益保証が暗黙の了解となっていた。実際に損失が生じた場合は、銀行の厚い利益から補填(ほてん)されていたものと思われる。
18年以降に発表された資産運用業に対する新規定は、このリスクなしのハイリターン商品を通して、規制を回避しながら不動産業などに資金が流れる異常な状況を、正常化させるものだ。
金融業態別の規制から、金融商品・サービスの機能別規制に転換した。よって、規制逃れの迂回融資を防止する一方、理財商品については、銀行が理財業務のための理財会社を原則設立することや、理財商品を市場価格で評価する基準価額を導入することを決めた。前者は、銀行と理財業務の分離で、後者は元本収益保証の禁止だ。新規定は、新型コロナウイルス感染症禍による延期を経て、22年から完全実施された。
その後の銀行の理財商品の現状を見ると、22年6月末時点で293銀行、25理財会社の約3.6万商品、残高29.2兆元(約550兆円)が存在している(中国理財網)。理財会社の規模は19.1兆元で、全体に占める割合は66%に達しており、銀行からの理財業務の分離が進む。また、基準価額型の理財商品の残高は27.7兆元で全体の95%を占めており、基…
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週刊エコノミスト
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