スナク首相の緊縮路線に批判拡大 増税が不評、人材流出に懸念も 増谷栄一
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英国はトラス前首相の景気浮揚を狙った大規模減税から、スナク新首相の大規模増税と歳出削減という正反対の財政再建にかじを切った。ただ、後者に対しては否定的な見方が広がり始めている。
政府経済政策を監視する予算責任局(OBR)は最新の中期財政・経済予測(2023~27年)で「(インフレ調整後の)実質所得の低下と金利上昇、住宅価格の下落により、個人消費と企業投資が圧迫され、22年7~9月期から(23年後半まで)1年余りにわたり、国内総生産(GDP)が約2%減というリセッション(景気後退)に陥る」として、3月の前回予測を下方修正した。英国経済は22年のプラス4.2%から23年にはマイナス1.4%と、マイナス成長に陥り、24年に1.3%増に持ち直してもコロナ禍前の水準に戻るのは25年(2.6%増)になるとの悲観的な見通しを示している。
OBR予算責任委員会メンバーのデビッド・マイルズ氏は英紙『デイリー・テレグラフ』11月21日付コラムで、「OBRの予測では、政府債務残高の見通しがスナク政権の増税・歳出削減政策でも4年後(26年)の政府債務残高は春時点(3月)の前回予測に比べ約4000億ポンド増加する。また、今後5年間(23~27年)のGDPは3月予測よりも約3.5%、約1000億ポンド低くなる。極めて大きな変化だ」と注目する。
テレグラフ紙の経済コラムニスト、リアム・ハリガン氏も11月20日付で、「ハント財務相は極めて間違った時期に、大規模な増税を課し、すでにマイナス成長になっている経済をリセッションへと深入りさせる危険性がある」と警告する。
スナク政権の財政再建の必要性についても懐疑的…
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週刊エコノミスト
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