経済・企業

日産のナンバー3だった関氏が台湾・鴻海のEVで狙う世界的野望 藤後精一

鴻海科技集団(フォックスコン)と吉利が開発したEV用プラットフォーム「MIH」(鴻海科技提供)
鴻海科技集団(フォックスコン)と吉利が開発したEV用プラットフォーム「MIH」(鴻海科技提供)

 元日産自動車ナンバー3で、日本電産の社長兼最高経営責任者(CEO)を務めた関潤氏が、台湾の鴻海精密工業グループで電気自動車(EV)事業を手がける鴻海科技集団(フォックスコン・テクノロジー・グループ)の最高戦略責任者(CSO)に2月1日付で就任した。

 関氏は、2019年に日産が経営体制を刷新する際の社長候補3人のうちの1人だったが、日産の独立意識が強かったことから、筆頭株主ルノーの首脳が嫌悪。3人の中で唯一のプロパーであるにもかかわらずナンバー3の副最高執行責任者(COO)の地位に置かれた。

 不満を抱えていた関氏に声をかけたのが、EVの駆動用モーター事業を本格化していた日本電産の創業者で、自身の後継者を探していた永守重信氏。「社長になる」ことを目指してきた関氏は、永守氏の要請を受け入れ、日産の副COOに就任した20年1月には退職。日本電産に入社し、その後すぐに社長に就いた。翌21年6月にはCEO職にも就いて永守氏の後継者になったかに見えたものの、担当していた車載事業の業績悪化の責任を問われ、22年4月にCOOに降格、9月には辞任して表舞台から去った。

アップルEVの有力候補

 その関氏を鴻海が幹部にスカウトしたのは、EV関連事業のグローバルでの拡大を期待しているからだ。アップルの「iPhone」の受託生産が主力の鴻海は、経営の第2の柱としてEV事業を据えて事業展開を本格化、25年にEV関連事業の年間売上高1兆台湾ドル(4兆4000億円)、世界シェア5%の目標を掲げる。鴻海はアップルが開発中のEV「アップルカー」の受託生産先の有力候補と見られており、仮にアップル・鴻海連合による競争力の高いEVが投入されると、スマホ市場と同様にEV市場を席巻する可能性がある。

 EV市場を開拓するという鴻海の野望をかなえるのにカギを握るのが、鴻海が推進するEVのオープンプラットフォーム「MIH(モビリティ・イン・ハーモニー)」だ。多くの企業が参加して競争力の高いEVの車台を共同で製作するというもので、これを活用すれば、企業は短期間でEVを開発できる。

 鴻海のプロジェクトには日米欧を含むさまざまな材料・部品メーカー2000社以上が参加しており、関氏とたもとを分かった日本電産も参加している。鴻海はMIHを活用して設計されたEVを、受託生産するビジネスを狙っている。

 この事業を成功させるカギとなる…

残り419文字(全文1419文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

4月30日・5月7日合併号

崖っぷち中国14 今年は3%成長も。コロナ失政と産業高度化に失敗した習近平■柯隆17 米中スマホ競争 アップル販売24%減 ファーウェイがシェア逆転■高口康太18 習近平体制 「経済司令塔」不在の危うさ 側近は忖度と忠誠合戦に終始■斎藤尚登20 国潮熱 コスメやスマホの国産品販売増 排外主義を強め「 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事