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経済・企業 EV

ボルボ・カー・ジャパン社長「新型EVでサブスクを通常プログラム化。4月に東京・青山にEV専門店を開設」/下(編集部)

「新型EVでサブスクを通常プログラム化する」(ボルボ・カー・ジャパンのマーティン・パーソン社長)
「新型EVでサブスクを通常プログラム化する」(ボルボ・カー・ジャパンのマーティン・パーソン社長)

 スウェーデンの自動車メーカー、ボルボ・カーズが日本市場において電気自動車(EV)で存在感を高めている。今年は都市部でも乗りやすい小型スポーツ用多目的車(SUV)を年後半に発売し、攻勢を掛ける計画だ。日本法人ボルボ・カー・ジャパンのマーティン・パーソン社長へのインタビューの(下)では、サブスクリプション(課金、サブスク)やオンライン販売などの新たな販売手法、サステナビリティへの取り組みについて聞いた。(聞き手=稲留正英・編集部)

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―― EVの時代では、車の販売方法も、ネットでのオンライン販売などと変わってくる。その戦略は?

■ボルボの「ブランドの約束(Brand Promise)」には、①安全性、②サステナブル、③パーソナル――の三つのキーワードがある。③のパーソナルは「いろんな形で車を提供する」という意味だ。その中に、所有せず使用するサブスク・プログラムがある。

 C40リチャージの日本導入に際しては、100台限定のテストケースだったが、非常に反応は良く、575台の申し込みがあった。

 興味深かったのが、75%がボルボが初めての人だったこと。そして、60%の人が、サブスクがあるから、ボルボを選んだ、つまり、車を所有したくない人たちだったことだ。だから、サブスクと車を購入する層はバッティングしない。

頭金なしで700万円の新車に乗れるサブスク

―― なぜ、C40でサブスクを導入したのか。

■最初は、みんなBEV(バッテリー駆動のEV)に対しては「下取りはどうなのか、技術は確かなのか」と不安があるのではないかと思った。でも、サブスクなら顧客は何のリスクもない。気に入らなければ、3カ月間の使用で、ペナルティなしで返却が可能だ。値段には車両保険だけでなく、対人保険も入っている。

―― サブスクの値段は。

■初回の応募時は月11万円。2回目はBEVのコストが上がったため、16万5000円となった。「サブスクは高くはないか」とよく言われるが、頭金なしで、登録諸費用や税金もなく、700万円の新車に乗れる。あと、任意保険は対人から車両までカバーしている。確かに3年間乗るのであれば、リースの方が安いが、サブスクなら、ノーリスクで3カ月後に解約できる。

―― ボルボの顧客の平均年齢層は50代ということだが、サブスクは。

■パターンとしては若い顧客か、ちょっと年配の顧客が多い。要するに保険が非常に魅力的だ。若い人たちは結構、保険料を払う。また、年配になるとまた保険料が高くなる。全年齢が対象の保険なので、大学生の息子や娘さんがいるご家族では全体的にお得だ。

―― 解約率はどれくらいあったのか。

■公表していないが、解約はあった。しかし、「車が気に入らない」などの理由はほとんどなかった。例えば、「引っ越し先に充電インフラがなかった」などの理由だ。だから、次に発売する新型のコンパクトSUVでは、サブスクは通常のプログラムにしたい。販売価格と同時に、サブスクの値段を発表する。

―― 当然、16万5000円より安くなると。

■まだ、発表していないが、そうなるかと(笑)。

オンライン販売の狙いは「ワンプライス」

―― ネットによる販売についてはどうか。

■グローバルで見ると、自動車業界はそちらにシフトしている。米テスラとか、ドイツのメーカーも欧州で結構しており、当然、ボルボもそれを見ている。オンラインで顧客が求めているのは、「ワンプライス(単一価格)」だ。営業マンとの商談とか、値引き交渉が嫌いな人は結構、多い。特に、アマゾンなどのオンライン販売に慣れた若い顧客はそれを求めている。我々もいいなと思っている。しかし、日本でいつやるかとは、まだ、発表していない。

―― では、まだ、オンライン販売は始めていない?

■ハイブリッドだ。BEVについては、全て、オンラインを窓口にする。その後に、ディーラーで契約する。いずれ、BEVの販売がどんどん増えていくので、オンラインから先がどこまで行くかは、今、検討している。それに対応するコールセンターとか、整備拠点とか一生懸命ビルドアップしている。

 これは欧州もそうだが、皆さんがすごく勘違いされているのは、顧客が望むから、オンラインにシフトしているのであって、ディーラーのマージンを減らすとか、ディストリビューション(流通)コストを減らすとか、そういう目的ではないということだ。

 600万円や700万円の車を買うなら、当然、テストドライブをしたい、何か、直接に相談したいというニーズはある。オンラインでの販売のあとは、当然、アフターサービスがある。だから我々は逆にもっとディーラーを大事にしないといけない。

―― ボルボの92拠点のうち、直営店は?

■東京、神奈川などの6拠点が直営だ。それ以外は、独立資本のディーラーだ。

―― BEVになると、この直営拠点は増えてくると?

■今のディーラーはほとんどが、4S(Sales=販売、SpareParts=部品販売、Service=アフターサービス、Survey=情報提供)の機能を持っている。しかし、これからは、多様な形になってくる。例えば、アフターサービスだけのサテライトや、中古車センターなど、形は変わってくる。

「スタジオ東京」でオンライン販売をテスト

―― 今年は、都内に新しいブランドの発信拠点を作るとか。

■4月に開設する「スタジオ東京」だ。従来、青山にあったスタジオ青山を一旦閉め、道路の反対側にオープンする。広さは従来の2倍で、電気自動車だけを扱う。地下に急速充電器を用意し、試乗もしやすくする。

 ここで、オンライン販売をテストしようと思っている。オンライン販売になると営業マンの役割は変わってくる。店舗では車は販売せず、値引き交渉もしない。その代わり、「ブランドアンバサダー」みたいな役割で、顧客をサポートすることになる。

「東京・青山に4月、EV専門店舗を開設する」(ボルボ・カー・ジャパンのマーティン・パーソン社長)
「東京・青山に4月、EV専門店舗を開設する」(ボルボ・カー・ジャパンのマーティン・パーソン社長)

―― 欧州では、ディーラーは在庫を持たず、顧客に鍵だけを渡す「エージェンシーモデル」が盛んに議論されている。

■そう、ディーラーの役割は変わる。しかし、サービスには全く、影響はない。

―― その場合に、ディーラーが何を収益で得るのか、という問題も出てくると思うが。

■販売店のバリューチェーンで、サービスや中古車販売などは全部ディーラーのビジネスだ。テストドライブとか、顧客のサポートもコミッションが入ることになる。ディーラーは、これから、メーカーから買い取った車の販売によるマージンではなく、コミッションを得ることになる。現在は、在庫のリスクはディーラーにかなりの負担だが、コミッション方式なら、在庫のリスクは全くなくなる。だから、ディーラーにとって悪い将来ではない。

 あと、スタジオ東京では、ボルボの「サステナビリティ(経済・社会の持続可能性)」を伝えていくのが大きな役割だ。

全92店舗の電気を再エネに変更

―― 北欧は元々、サステナブルなイメージがある。

■ボルボはもう25年も前から、環境への配慮がコアバリューの一つになっている。サステナビリティを言うのは簡単だが、問題は本当にそれをやるかどうか。そこで、今年は全92店舗で電気を再生可能エネルギーにしようと思っている。太陽光パネルが設置できるところはそれでもいいし、それができないところは外からカーボンフリーの電気を買ってくる。再エネの割合はまだ2割だが、ディーラーにインセンティブを提供しており、急速に導入が進んでる。そうなると、店舗の急速充電器で充電すると、LCA(自動車のライフサイクルを通じた温室効果ガスの排出量)がすごく下がる。

 あと、バッテリーをグリーンエナジーで作ろうとしている。スウェーデンのイエーテボリにあるトースランダ工場の近くに新たに、新興企業ノースボルトとバッテリーの製造工場を建設し、EV50万台分のバッテリーを作る。26年から稼働するが、それは全部、水力発電のグリーンエナジーで作る。また、車体を作るトースランダ工場は同じくスウェーデンのショブデにあるエンジン工場に続き、昨年、完全にクライメートニュートラル(温室効果ガスの排出量が正味ゼロ)になった。

―― それは、サステナビリティに関心がある顧客へのアピールポイントになる。

■我々は2040年にクライメートニュートラルな企業になることを目指している。これは、自動車メーカーの中でも、一番アグレッシブな目標だと思う。だから、100%のBEV移行は絶対にマストだ。

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