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楽天グループ最大の赤字3700億円超 0円モバイル終了で解約50万件超 佐野正弘
楽天グループが一層の苦境に立たされている。2月14日に公表した2022年12月期決算で、連結の最終損益が3728億円の赤字と過去最大になった(図)。携帯電話子会社の楽天モバイルへの先行投資の負担に苦しむ中、同社は資金調達のため社債を相次いで発行しており、金融事業を除く有利子負債も1兆7607億円にまで拡大している。
楽天グループの22年12月の連結営業損益は3638億円の赤字だが、楽天モバイルの営業赤字は4593億円にものぼる。楽天モバイルはかねてから23年中の単月黒字化を目指していただけに、23年12月期は赤字の解消と利益を出せる体制の構築が急務だ。楽天モバイルは従来の拡大路線を大きく転換し、コスト削減を徹底した利益重視の戦略を打ち出すに至っている。
確かに、楽天モバイルは昨年10月、基地局の人口カバー率が98%を超え、大規模な基地局整備を進める必要がなくなった。KDDIに支払っているローミング費用などの削減にめどをつけつつある。また、通信量が1ギガバイト以下なら月額0円で使える料金プランを昨年6月に廃止したことで、すべての契約者が料金を支払うようになっており、今後ARPU(1ユーザー当たりの平均売り上げ)も一層の上昇が見込める。
郵便局店舗も閉鎖へ
一方、売り上げを増やすには契約数を増やす必要があるが、郵便局内で展開する約200の簡易店舗を今年4月末までに閉店するなど、営業拠点であるはずの実店舗の整理を進める方針も打ち出している。コスト削減と契約拡大の両立は、非常に大きな課題だ。
そこで、楽天モバイルが打ち出した策は二つある。一つが法人向けサービスの提供だ。国内通話が無料で利用できるアプリなどを用意し、オンラインショッピングモール「楽天市場」をはじめとした楽天グループと取引のある企業を中心に法人サービスを提供。初年度となる23年12月期は、最低でも100万契約の獲得を目指すと意気込んでいる。
もう一つは、顧客獲得のオンラインシフトだ。とりわけ楽天グループのサービスを多く利用するユーザーからの、口コミによる契約拡大を重視する考えのようだ。月額0円施策で獲得できたのは、コスト重視の顧客で、売り上げに結びつかなかった反省がある。ただ、オンラインに重きを置く施策は、インターネットやスマートフォンに詳しくない顧客を取りこぼすこともあり、契約数を劇的に伸ばすのは難しいだろう。
短期的に収益を上げるには、安価な料金プランにさらなるメスを入れ、ARPUを引き上げるのが近道だ。しかし、月額0円施策の終了以降、50万件以上の顧客が流出しており、料金プランの見直しには相当に慎重な判断が求められる。
楽天グループにとって23年は、楽天モバイルの業績底上げといういばらの道を歩むことになる。
(佐野正弘・携帯電話ライター)
週刊エコノミスト2023年3月7日号掲載
FOCUS 楽天グループ決算 過去最大3700億円超の赤字 モバイル契約増はいばらの道=佐野正弘