着想は『リチャード三世』から。松本幸四郎主演で描く陰謀惨劇 小玉祥子
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舞台 三月大歌舞伎 花の御所始末
古典と新作の両方で縦横に活躍する松本幸四郎が歌舞伎座の「三月大歌舞伎」で新作歌舞伎「花の御所始末」(宇野信夫作、齋藤雅文演出)に室町幕府六代将軍、足利義教役で主演している。
宇野(1904〜91年)が英国のシェークスピア作の史劇『リチャード三世』に着想を得、虚実いり交ぜて書き上げた作品で、1974年6月、帝国劇場での初演、83年2月、新橋演舞場での再演では幸四郎の父・二代松本白鸚(はくおう)が「悪将軍」と異名をとった義教を演じた。
室町幕府の体制を整え、太政大臣となった三代将軍・義満の次男・義教は将軍の座を狙って策謀を張り巡らす。まず、管領の畠山満家と手を組み、世継ぎである兄の義嗣(よしつぐ)に謀反の疑いがあると義満に知らせたうえで義満を殺害し、その罪を義嗣にかぶせて命を奪う。野望が適(かな)い将軍に即位した義教は、自身の処遇に不満を訴えた満家までも手にかける。
宇野は昭和の河竹黙阿弥と呼ばれ、「巷談宵宮雨」や「ぢいさんばあさん」など、今日まで頻繁に上演される新作歌舞伎を生み出した劇作家だ。その宇野が六代市川染五郎当時の二代白鸚にあてて書き下ろした作品である。初演時の満家は初代白鸚(八代幸四郎)が務めた。
庭に美しい花木が植えられた「花の御所」と呼ばれる足利将軍家の室町御所で、舞台とは裏腹の惨劇が繰り広げられる。
舞台を見た宇野は「此の舞台は、染五郎幸四郎以下熱心に勤め、原作を生かしてくれた。私は従来自作を見ることをあまり好まず、初日があいて、せ…
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週刊エコノミスト
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