教養・歴史アートな時間

集大成ではなく新たな出発点に 80歳のチェリストの挑戦 梅津時比古

チェリストの堤剛 ©︎鍋島徳恭
チェリストの堤剛 ©︎鍋島徳恭

クラシック 堤剛 80歳記念チェロ・リサイタル

集大成ではなく新たな出発点に 80歳のチェリスト・堤剛の挑戦

 チェリストの堤剛が「80歳記念チェロ・リサイタル」と銘打ち、全国で公演を行う。「人生で見ると80年は長いが、芸術の上ではひとつの通過点。ここまでやった、というのではなく、こういうことをやりたいというリサイタルとして、新たな出発点にしたい」と、意欲的なプログラムを展開する。

 冒頭はベートーヴェン《チェロ・ソナタ第4番ハ長調》。堤は「4番は後期の初めにある。ベートーヴェンは、初期は音で歌い、中期は音で語り、後期は彼の考えを音に託している」と位置づける。「ベートーヴェンは年齢を重ねないと分からないと前から言われてきたが、確かに最近、彼が何を語りたかったか、少し分かってきたように思う。とりわけ、3年前にウィーンに行ったときに、ベートーヴェンの音楽はウィーンの言葉そのものなんだと印象づけられ、大きな親しみを感じられるようになった」

 ドイツで暮らしているピアニストの河村尚子にアンサンブルを持ち掛けたのも、その要素が強い。「チェロの音を引きだしてくれるピアニストを大事にしている。河村さんは、私にも語りかけてくれて、触発されるのではと思う。その存在感に対応できるかが演奏家としての醍醐味(だいごみ)。河村さんとなら、自分には無いものを作れるのではないか」と期待を寄せる。

 目を引くのは、堤の妻で劇作家の堤春恵が現代作曲家の権代(ごんだい)敦彦に今回のために委嘱した《無伴奏チェロのための“Z”ゼ…

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