教養・歴史アートな時間

モデルは高校時代の小中和哉監督自身 8ミリ映画をつくる青春群像劇 寺脇研

©「Single8」製作委員会
©「Single8」製作委員会

映画 Single8

 2011年のアメリカ映画「SUPER8/スーパーエイト(原題Super8)」は、ビデオの前の8ミリフィルムの時代に映画を作ろうとする映画少年たちの夏休みを描く中に、何より経済が優先された20世紀の地球における文明論を込めた傑作娯楽SF映画だった。1979年のアメリカの田舎で撮影する彼らが使うフィルムは、65年に発売され世界に広く普及したコダック社の「Super8」で、それが題名になっている。

 製作費5000万ドルのこの世界的ヒット作に比べ、おそらく3ケタ違う低予算で作られただろう日本映画の新作「Single8」は、しかし内容面で決して負けてはいない。78年の夏休み、文化祭で上映する作品に挑む高校生たちが使うのは、富士写真フイルム製の「Single・8」だが、コダック相手に善戦した経済黄金期の日本ブランドの意気が、こちらの題名には反映されている。

 ビデオ時代になると高校生の映画作りも珍しくなくなり、スマートフォンで撮影してユーチューブで流す昨今は手軽に誰でも撮れるようになったけれど、70年代までは極めてハードルが高かった。78年6月に日本公開の「スター・ウォーズ」に興奮し、特撮をやりたくなったのをきっかけにSFものを企画するこの映画の主人公たちも、文化祭参加への学校側のフィルム代がなければ無理だったのだ。

 映画への単純素朴な憧れと、8ミリでの製作過程の手作り感が生々しいのは、63年生まれの小中和哉監督自身をモデルにしているからだ。劇中の作品「タイム・リバース」…

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週刊エコノミスト

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