全米が揺れた!“飛行物体”騒動 バイデン政権は指針作りへ 西田進一郎
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北にカナダ、南にメキシコという友好的な隣国に囲まれ、東西は大西洋と太平洋で隔てられているのが米国だ。外側から物理的に主権を侵害されるかもしれないという不安を感じている人は少ない。それだけに何か疑わしい事柄が起きると大騒ぎになる。2月の「飛行物体」騒動はそんな米国民の姿を印象付けた。
発端は、西部モンタナ州で1日に確認された中国の偵察気球だ。米メディアは連日報じ、撃墜の様子は全米注視の出来事となった。さらに10日からは3日連続で他の「飛行物体」を撃ち落とし、報道は一気に過熱した。
そこで出てきたのが、宇宙人が乗った未確認飛行物体(UFO)ではないかという議論だ。米北方軍の司令官が12日、宇宙人の可能性を否定しているのかという記者団の問いに「現時点では何も排除していない」と答えたことからSNSなどで広がった。
ホワイトハウスは翌13日に沈静化に努めた。ジャンピエール大統領報道官は記者会見の冒頭で「宇宙人や地球外生命体の活動を示す兆候はない」と話し、同席した国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官も「米国民が宇宙人を心配する必要があるとは思わない」と述べた。
政府も議会も高い関心
背景には、近年の米国内でのUFOに対する関心の高まりがある。国防総省は2021年にUFOの探知や識別などを行う新たな部署「空中物体識別グループ」を設置。翌22年には拡充して「全領域異常対策室」と改称した。これとは別に、航空宇宙局(NASA)も22年に研究チームを設置した。
連邦議会も動いている。下院情報特別委員会の小委員会は22年5月、UFOに関する公聴会を開いた。連邦議会がUFOを巡る公聴会を開くのは約半世紀ぶりだ。米軍が撮影した「説明できない飛行物体」の映像などが公開された。
米情報機関を統括する国家情報長官室は今年1月にUFOを含む「未確認空中現象」(UAP)に関する年次報告書を公表した…
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週刊エコノミスト
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