原発由来の水素は「グリーン」か EU法令案めぐり独仏が対立 熊谷徹
有料記事
欧州委員会とフランス政府は、原発からの電力を使って生産された水素を、再生可能エネルギー電力による「グリーン水素」と同様に優遇する方針を発表し、これにドイツ政府が反発している。
独ニュース週刊誌『シュピーゲル』は2月14日付電子版で「欧州委は、原発からの電力で水を電気分解して生産された水素を『低炭素水素』として、再エネ電力で生産された『再生可能水素』と同列視し、補助金などで優遇することを計画。欧州委は、30年までにこれらの水素を1000万トン生産することを目指している」と報じた。
独経済日刊紙『ハンデルスブラット』の2月16日付電子版によると、ドイツ連邦経済気候省の報道官は、「原子力は再エネではない。したがって原発からの電力を使って生産された水素を『グリーン水素』と定義することに反対する」と述べている。連立与党の一党である緑の党も、原発からの電力による水素を「グリーン」と見なすことに特に強く反対している。
独日刊紙『フランクフルター・アルゲマイネ(FAZ)』は2月21日付紙面によるとフランス、チェコ、ポーランド、ハンガリーなど9カ国は、原発の電力を使って生産される水素を低炭素水素と定義することに賛成している。これに対し、ドイツ、スペインなどは、経済エネルギー大臣会合でEU(欧州連合)の提案を拒否する方針だ。
ドイツの態度に対して、仏政府は強い不満を表明している。ドイツの水素関連ニュースサイト「H2ニュース」(1月23日付)によると、現在フランス、スペイン、ポルトガルの3カ国は、スペインの風力発電所・太陽光発電所からの電力で水素を生産し、フランスへパイプラインで輸送することを計画している。バルセロナ・マルセイユ間の海底パイプラインなど2カ所の経路の建設には25億ユーロ(約3500億円・1ユーロ=140円換算)が投じられ、2030年に稼働する。
H2MEDと呼ばれるこのプロジェ…
残り624文字(全文1424文字)
週刊エコノミスト
週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める