米国の住宅供給不足で家賃高騰 中低所得者層を圧迫 岩田太郎
有料記事
米国の賃貸物件で暮らす世帯について、収入に対する家賃の割合(RTI)の全国平均が2022年10~12月期、連邦政府が「負担が重い」と定義する30%を20年ぶりに突破した。物価上昇で家賃が高止まりする中、住居費が家計を圧迫する影響が議論されている。
米不動産インターネット仲介のレッドフィンでデータアナリストを務めるリリー・カッツ氏は2月10日の発表資料で、「家賃の上昇ペースは落ち着きを見せ始め、23年1月の家賃中央値の上昇は前年同月比2.4%と、20カ月ぶりの低い伸びだった。1年前の22年1月の上昇率が6倍以上の15.6%であったことを考慮すると、借家人にとっては朗報だ」と分析した。
しかし、米ムーディーズ・アナリティックスのシニアエコノミストであるルー・チェン氏は2月21日付の米政治サイト「ザ・ヒル」の解説記事で、「22年10~12月期からRTIが30%を超えていることは象徴的な意味を持つ。低所得層や中間層の下部では40%を超える世帯も多い」と述べ、所得の低い層ほど住居費負担が重いままだと示唆した。
同記事は、「家賃上昇率に追い付かない賃金上昇率、慢性的な供給不足の中で需要に応えられない住宅建設、住宅ローン利息の急上昇などが、RTIの30%超えをもたらした」と分析。
その上で、住宅購入が可能な収入を得る層についても、「米連邦準備制度理事会(FRB)の政策金利引き上げで、30年物住宅ローン金利が再び6%を超え、借家人が持ち家に乗り換えることが困難になっている」とし、賃貸住宅の需要が引き締まったままになっている背景の一つとして説明。「RTIを30%未満に低下させるには、賃金をさらに引き上げ、住宅供給を増やさなければならない」と締めくくった。
構造的な住宅不足
一方、家賃の高止まりの大きな要因である住宅供給の不足について、2月16日付の米『ファストカンパニー』誌電子版は、「新型コ…
残り583文字(全文1383文字)
週刊エコノミスト
週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める