経済低迷と大手企業の“脱英”は英国政府の無策のせいか 増谷栄一
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英国商工会議所(BCC)が3月初め、ショッキングな経済予測を発表した。英国の2023年国内総生産(GDP)実質成長率が前年比0.3%減とマイナス成長に陥り、24年に0.6%増とプラスに戻るが、25年も0.9%増と低成長が続くとした。BCCのアレックス・ベイチ政策担当理事は3月9日付の英紙『デイリー・テレグラフ』で、「英国は今年、リセッション(景気後退)は回避する見通しだが、成長は鈍化、24年10~12月期までコロナ禍前の水準に回復しない」と断言した。
英経済の不透明な見通しについて、ベイチ氏は、「企業の積極的な投資が困難なことが最大の理由」と指摘。「資金を新プロジェクトに投資するリスクを冒すだけの奨励策がほとんどない」と、政府の無策を厳しく批判する。
英国は欧州連合(EU)や米国に比べ、企業投資を促すための奨励策競争、特に、世界経済の潮流となっているグリーンエネルギー(再生可能エネルギーや省エネ)投資分野で大きく出遅れている。
EUは15年以降、毎年720億ユーロ(約10兆3000億円)の再エネ補助金を支出。米政府もEUに対抗するため、22年10月にインフレ削減法(IRA)を導入、グリーンエネルギー投資のため、今後10年間で補助金と税額控除で計3690億ドル(49兆円)の財政支出を可能にしている。
シティーの存在感低下
英国と米・EUとの奨励策の格差が広がる中で、英国の証券市場に異変が起き始めている。アイルランドの建材大手CRHが3月2日、ロンドン証券取引所での上場を廃止、ニューヨーク証券取引所に移管することを検討中と発表。また、英国と米国で二元上場している英ブックメーカー大手フラッターもプライマリー上場をニューヨークに変更する可能性を示唆、企業の英国離れが相次いでいる。
テレグラフ紙のオリバー・ギル経済部デスクは3月2日付コラムで、「これらは今週初め(3月2日)、英半導体…
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週刊エコノミスト
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