中国で大胆な不動産支援策が次々 正常化に期待 神宮健
2023年も中国国内では、金融面からの不動産支援策が続いている。
過去数年間の中国政府の不動産政策を振り返ると、20年に不動産バブル抑制のための融資規制措置「3本のレッドライン」をはじめとする政策が打ち出された。これらは不動産開発業者の資金調達を絞るもので、多数の不動産会社が資金繰り難に陥った。一方、需要面では従来、各地で購入制限策が取られていたため、21年以降、不動産市場は需給両面からの引き締めで大きく落ち込んだ。
この状況を受け、政府は21年秋以降、住宅は住むもので投機対象ではないとの基本方針は不変としつつも、不動産市場に対する政策を徐々に調整してきた。22年11月には、中国人民銀行(中央銀行)と銀行保険監督管理委員会(銀保監会)が金融面からの16項目にわたる支援策を発表した。
住宅に対する実需、優良な開発業者、不動産物件の引き渡し、賃貸住宅建設・経営、不動産プロジェクト再編を資金調達面などから支援する内容で、不動産市場・業界の正常化を意図しており、23年の政策はこれに沿ったものだ。
不動産供給側に関連する政策を見ると、1月の「優良な不動産企業のバランスシート改善計画行動案」がある。優良不動産会社に対して3本のレッドライン政策を緩和する一方、銀行借り入れや債券発行による資金調達を支援し、金融機関との協議による既存借り入れの返済延期を奨励する。不動産物件引き渡し、不動産業界のM&A(企業の合併・買収)や再編、賃貸住宅供給拡大も後押しする。
2月には、証券監督管理委員会が、不動産私募投資基金(投資信託)の試行を始めた。既存の不動産物件(住宅、商業不動産)の証券化などにより不動産会社の資金調達手段を増やす目的だ。
資金調達チャンネル拡充
また、人民銀行・銀保監会は「賃貸住宅市場の発展の金融支援に関する意見」(草案)を発表した。銀行貸し出しにより賃貸住宅の建設、既存住宅の賃貸住…
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週刊エコノミスト
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