米国社会で存在感高まるアジア系 アカデミー賞でも初の主演賞 小林知代
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華やかな歌や踊り、ファッションが米国の春を彩るアカデミー賞。今年の授賞式は、アジア系移民にとって重要な意義を持つイベントになった。
最優秀作品賞を受賞した「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」は、公開中の日本でも「エブエブ」と呼ばれ、話題になった。注目に値するのは、主演女優賞にマレーシア出身のミシェル・ヨーが選ばれたことだ。今回で95回を数えるアカデミー賞の歴史で、アジア系俳優が主演賞を受賞するのは初めて。ヨーはスピーチで「私のような容姿の子供たちよ、夢を大きく持ってほしい」と述べ、アジア系米国人を勇気づけた。
覆した固定観念
アジア系移民は、テレビ番組や映画で悪役や端役で登場するのが常だったことを振り返れば、これは快挙である。女性によるエンパワーメント(奪われた力を取り戻すこと)の信望者でもあるヨーは、心身ともに強い女性の役を目指して長年女優活動を続けてきたという。アジア系女性への固定観念を覆す意味でも、今回の受賞には大きな意義があった。
米国では、アフリカ系米国人や先住民などのマイノリティー(人種的少数派)ごとに、どのように米国に根付いたのか、そのルーツや文化を理解するための「月間」が設けられている。アジア・太平洋諸島系米国人は毎年5月に指定されている。
日本人の最初の移民が米国を訪れたのは、幕末期の1843年5月。中国系移民の犠牲の下に完成したといわれる大陸横断鉄道が開通したのも1869年5月だったことなどから、5月が選ばれたという。
アジア・太平洋諸島系と一言でいっても、東アジア、東南アジア、南アジア、太平洋諸島と、実に多種多様な移民が存在する。彼らの声を束ねるため、アジア・太平洋諸島コミュニティーが複数発足し、権利を保護するためのロビー活動を展開している。最近では、米国社会で多発するアジア系米国人を狙ったヘイトクライム(憎悪犯罪)に立ち向かうことや…
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週刊エコノミスト
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