「いずれ政権交代」息巻く維新 次期衆院選にらみ神経戦も 中田卓二
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9道府県知事選が3月23日に告示されたのを皮切りに統一地方選がスタートした。報道各社の世論調査で内閣支持率は持ち直しつつあり、岸田文雄首相の政権運営に直結するような波乱要因は今のところ見当たらない。しかし、その先を読むには、日本維新の会の浮沈に注目する必要がある。
維新は統一地方選で地方議員を現在の400人規模から600人規模に増やすことを目指す。非改選議員が約150人いるため、約450人が当選すれば目標に届く計算だ。馬場伸幸代表は進退をかけて臨むと公言しているが、他党は「分析するとクリアできない数字ではない」(立憲民主党幹部)と警戒する。
大阪で圧倒的な強さ
維新は2021年衆院選と22年参院選で議席を伸ばした。特に参院選の比例代表では784万票を獲得し、立憲民主党の677万票を抑えて「比例野党第1党」に躍り出た。次期衆院選では正味で野党第1党の座を狙い、いずれは政権交代だと息巻く。そのためにも地方議員を増やし、党の足腰を強化しようというわけだ。
とはいえ、自民党との地力の差はまだまだ大きい。総務省の調べによると、同党の地方議員は3438人(21年12月31日現在)。時期が違うため単純に比較はできないが、維新が600人に増えたとしても自民党の6分の1程度だ。ちなみに立憲民主党は194人(同)。地方議員の少なさは国政選挙での不振とも関係している。
維新の力の源泉は言うまでもなく地盤の大阪での圧倒的な強さだ。21年衆院選では大阪府内の小選挙区で、公明党が候補者を立てた4選挙区を除く15選挙区で全勝した。統一地方選前半戦の4月9日に投開票される大阪府知事選、大阪市長選も他陣営に先行する。
維新が大阪府・市の行政を長く担ってきたことがほかの野党との違いで、有権者の投票心理に影響しているのは確かだろう。維新幹部は「各地で首長が増える意義は大きい」と語る。直近では2月の京都府舞鶴市長選で、元市議の鴨田秋津氏が大阪府以外で初めて維新単独推薦候補として当選した。統一地方選の奈良県知事選でも、自民党系の分裂に乗じて公認候補の勝機をうかがう。
統一地方選後半戦と同じ4月23日には衆参両院の計5補選が投開票される。野党の準備が遅れ、一時は自民党の全勝という観測が流れたが、衆院和歌山1区がにわかに注目区に浮上している。
自民党はすったもんだの末、2月下旬に門博文元衆院議員を公認した。門氏は同区で野党系の岸本周平氏(現和歌山県知事)に4連敗し、21年衆院選では比例代表での復活もできず落選した。今回、選考過程で世耕弘成参院幹事長は門氏を推したが、二階俊博元幹事長は最後まで態度を明確にしなかった。両氏の間には昨年11月の知事選以来の確執がある。
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週刊エコノミスト
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