スウェーデンでレアアース鉱床発見 埋蔵量は欧州最大/141
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スウェーデンの国営鉄鉱石会社LKABが1月、100万トン規模のレアアース(希土類)酸化物を含む大規模な鉱床をスウェーデン北部のキルナ鉱床で発見したと発表した。埋蔵量は欧州最大という。欧州連合(EU)の政策執行機関である欧州委員会は今後、電気自動車(EV)や再生可能エネルギーの増加に伴い、2030年までにレアアース需要が現水準の5倍に膨らむとみており、重要な鉱山となるのは間違いない。
レアアースは17種類の元素の総称で、生産や流通が少ないレアメタル(希少金属)の一種である。携帯電話やハードディスクなどのハイテク製品のほか、EVのモーターや風力発電タービンなどに使われており、脱炭素社会を実現する上で不可欠である。そのほか、ミサイル誘導システムなど軍事用電子機器にも利用され、経済安全保障の観点からも重要な戦略資源とされる。
米地質調査所(USGS)による世界のレアアース推定埋蔵量(22年)は1億3000万トンで、内訳は中国4400万トン、ベトナムが2200万トン、ブラジルとロシアがそれぞれ2100万トンである。一方、レアアースという名前の通り、世界の年間生産量はわずか30万トンで、中国がこのうち21万トンと7割を占める。
レアアースの精錬には、他の元素から分離する高度な精錬技術と大量のエネルギーを必要とする。経済的に採算が取れる鉱山は世界に偏在しており、日本や欧州ではほとんど見つかっていなかった。EUでは使われるレアアースの9割以上が中国から輸入されており、EUは加盟国に探査を行うよう指示していた。
一方、日本はレアアースの輸入のうち、中国が約6割を占める。中国が10年、レアアースの日本への輸出を大幅削減したため、調達網が混乱した。日本がその後、世界貿易機関(WTO)に提訴し、14年に勝訴したために規制は撤廃されたが、日本では調達先の多様化の動きが広がっている。
生産開始には時間
キルナは世界有数の鉄鉱床地帯で、古くから鉄鋼業の町としても知られる。今回の発見により中国依存を軽減できる可能性が出てきたが、採掘が鉱山周辺の水資源や生態系に及ぼすリスクが新たに懸念されているため、…
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週刊エコノミスト
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