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教養・歴史 小川仁志の哲学でスッキリ問題解決

何事にもさめていて美術館でも名画の前を素通り。物事を楽しめる方法は?/169

ベンス・ナナイ(1974年~)。ハンガリー出身の哲学者。美学をテーマにしている。映画評論家としても知られる。著書に『Aesthetics as Philosophy of Perception』(未邦訳)などがある。(イラスト:いご昭二)
ベンス・ナナイ(1974年~)。ハンガリー出身の哲学者。美学をテーマにしている。映画評論家としても知られる。著書に『Aesthetics as Philosophy of Perception』(未邦訳)などがある。(イラスト:いご昭二)

Q 何事にもさめていて美術館でも名画の前を素通り。物事を楽しめる方法は? 私は人からよくさめているといわれます。たしかに何事も楽しめないのです。例えば、お付き合いで美術館に行っても、名画の前を素通りしてしまいあきれられます。どうしたらもっと物事を楽しめるのでしょう?(商社勤務・40代女性)

A 「分散された注意」で、多様な要素を発見し、世界を別様にとらえる扉を開こう

 誰しも自分の興味のないことは楽しめないものです。ただ、ほかの人が楽しんでいるということは、何らかの面白い要素があるはずです。それを発見できれば、きっと楽しめると思います。そこで参考にしたいのが、ハンガリー出身の哲学者ベンス・ナナイの考えです。

 ナナイは芸術をテーマにしており、真の美的経験とは何かについて論じています。一般に私たちは、絵を見るとその中で一番目立った部分に着目しがちです。そして、その部分だけを見て、美的経験を得た気になってしまいがちです。

青の隣や奥に潜むもの

 例えば、これはナナイ自身が挙げている例ですが、黒い背景に青いターバンを巻いた男性が描かれた「青い帽子の男」という名画を見たとしましょう。するとこの青だけに着目してしまうのです。でも、それは絵画を見たのではなく、青という色を見たに過ぎないといいます。

 ナナイによると、この場合私たちは「集中した注意」を向けているだけだからです。そうではなくて、真の美的経験を…

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