広島サミット後「解散」に現実味 ポスト岸田のつばぜり合いも 伊藤智永
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6月衆院解散はあるのか。統一地方選の真っ最中だが、永田町の関心は、早くもG7広島サミット(5月19〜21日)後の政局へ向いている。岸田文雄首相は「考えていない」と否定するが、自民党の森山裕選対委員長は衆院小選挙区の「10増10減」に基づく新しい区割りごとの公認候補予定者を急ピッチで決定。茂木敏充幹事長は「いつあってもいいように準備を進める」と発言し、是非もなく機運は醸成されつつある。
荒業繰り出す萩生田氏
参院東京都選挙区で4年前にトップ当選し、現在3期目の丸川珠代元五輪担当相が、新しい衆院東京7区(渋谷区・港区)へくら替え出馬することになった。旧同区では、立憲民主党政調会長で「次の内閣」官房長官のベテラン、長妻昭氏が連続5回勝ち続けている。「次は都知事候補か」との声もあった丸川氏が参入すれば、全国的な注目選挙区となる。
大胆な調整を主導するのは、自民党都連会長の萩生田光一政調会長。7月8日の安倍晋三元首相の一周忌をめどに、安倍派の後継会長をめざしている。同じく衆院くら替えを狙いながら果たせないライバルの世耕弘成参院幹事長の下で、幹事長代行を務める同派中堅の丸川氏を引き抜くのは、かなり刺激的な荒業だが、派閥内の勢力争いが絡むつばぜり合いも同時に進行している模様だ。
「10増10減」に伴う候補者調整は、15都県134選挙区に及ぶが、自民党は4月上旬までに114選挙区の支部長を決定し、残るは20選挙区。選定の遅れる野党を引き離して選挙態勢を整えている。難航したのは、東京(5増)・神奈川(2増)など定数増の都県だ。そのうち東京は、14区(墨田区・江戸川区の一部)、18区(武蔵野市・小金井市・西東京市)、30区(府中市・多摩市・稲城市)の候補者が3月下旬に発表されたが、18区の新支部長は党本部が「女性限定」の珍しい条件で公募してから、わずか約20日間で決める早業だった。
同区は現職の長島昭久氏が3年前、やはり党主導の「落下傘」で支部長に就任し、地元市議らが猛反発。都連が「二度とやらない」と約束した経緯がある。ところが区割り変更で長島氏は新たにできた30区での出馬を選択。地元で後釜を探していた矢先に党本部の方針が下りてきた。怒った市議らが連名で「男性排除の逆差別だ」と都連に抗議書を送りつける騒ぎになったが、党本部が押し切った。
選ばれたのは、元農林水産省キャリアの福田かおる氏。元農相の斎藤健法相に見込まれて議員秘書となり、今回の公募で地縁のない18区から国政をめざす。党本部関係者によると、河野太郎デジタル担当相に近い有望な応募者もいたらしいが、選考で漏れたのは「萩生田氏の意向もあったのではないか」との見方があるという。ここでも「ポスト岸田」レースがすでに始まっているわけだ。
過去に日本でG7サミットが開かれた時は、前後に衆院解散が行われた例が多い。過去6回のうち4回はサ…
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週刊エコノミスト
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