G20との両立に岸田首相が腐心 広島サミットの成否握るインド 及川正也
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広島市で5月19日から21日まで開催される主要7カ国首脳会議(G7サミット)まで約1カ月。その露払いとなるG7外相会合が4月16~18日、長野県軽井沢町で開かれた。支持率が上向く中、外交の大舞台・サミットで成果を上げ、それを跳躍台に政局の主導権を握る。そんな岸田文雄首相の思惑通りに事は運ぶだろうか。
「サミットの成否のカギを握るのはインドとの関係だ」。そんな声があちこちから聞こえる。9月にニューデリーでの主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)を主催するインドが最も重視するのは、経済的な苦境にあえぐ南半球を中心とする新興国・途上国「グローバルサウス」だ。インドは今、盟主的な存在でもある。
グローバルサウスが鍵
そのインドが頭を抱えるのが、長引くロシアのウクライナ侵攻だ。高騰するエネルギー価格、深刻化する食糧不足が途上国経済を痛撃している。大きな原因となっているのが、ウクライナ戦争だ。外務省関係者によると、「インド政府には中立的な立場をとる途上国から『一刻も早い停戦を』という悲鳴が届いている」という。
現実は悲観的だ。最近、インドを訪問した元政府高官は、インド当局者から悩みを打ち明けられた。「広島サミットでG7は団結してロシアと戦う姿勢を示すだろう。一方で、習近平国家主席のロシア訪問で中露関係が健在であることを示した。米欧日と中露の対立が先鋭化し、世界の分断が深まればG20サミットは難しくなる」
G7は自由と民主主義、法の支配、人権など価値観を共有する米欧日の枠組みだ。いずれも米国の同盟国で世界経済をけん引してきた。一方、G20はグローバル化した国際経済の調整機能を持つ。主要国に加えて中露など主要な新興国のほか、アジア、アフリカ、中南米の中規模国も含まれる。結束よりも連携を重視する。
G20の束ね役となるインドの立場になれば無理もない話だが、ロシアの暴挙は看過しがたい。G7の最重要テーマは「法の支配」を確認することにある。世界の平和と安全の維持に責任を持つ国連安全保障理事会の常任理事国でありながら、自ら平和を破壊し、隣国を侵略したのはロシアだ。
そのロシアに影響力を行使できる国は限られる。中国を除けば、歴史的な関係が深く、武器・兵器やエネルギーの主要な取引先であるインドだけだ。むしろ停戦の仲介役を買って出てはどうか、と水を向ける元政府高官にインド側は「互いに優位性を築こうと激しく戦っている今、停戦は望めない」と動く気配を見せなかったという。
それでもインドをむげにできないのが日本の立場だ。岸田首相は「G7広島サミット、G20ニューデリーサミットの成功に向けて協力していきたい」と繰り返し表明している。G7サミットには招待したモディ首相が出席し、G20サミットには岸田首相が参加する。意思疎通の場となったのが、3月20日の日印首脳会談だ。
訪印した岸田首相にモディ…
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週刊エコノミスト
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