「関西」「都市部」が不安要因に 自民は維新旋風にどう向き合う 人羅格
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5月連休明けの国会は、広島での主要国首脳会議(サミット)終了後の会期末に、岸田文雄首相が衆院の早期解散を判断するかが焦点になる。
衆参5補選は自民の4勝1敗となり、首相は何とか面目を保った。だが、政権への追い風は感じられず、むしろ厳しい内容だった。日本維新の会の躍進を前に「関西」「都市部」という二つのカベが解散戦略を縛りつつある。
勝利感なき4勝1敗
「いま、衆院解散は考えていない。重要政策を前進させていく」。4月24日、補選を受けて型どおりに語った首相の表情は硬かった。まさに、薄氷の4勝1敗。投票前夜、政界を駆け巡っていた国会会期末の「6月解散説」はかなり勢いを失った。
それもそのはず。5補選は「5戦全勝」が勝敗ラインとされておかしくないほど、自民に有利な構図だった。にもかかわらず、安倍晋三元首相の死去に伴う山口4区以外は「接戦か敗北」だった。
浮き彫りになったのは、岸田自民が選挙戦略で抱える「関西」「都市部」という2大課題だ。
統一地方選での維新旋風はそのまま衆院和歌山1区に持ち込まれた。保守地盤の厚い和歌山で、重鎮の二階俊博元幹事長らが全面支援したはずの自民元職候補は、フタを開ければ維新の女性新人候補に6000票もの差をつけられた。奈良知事選に次いで、関西自民を「維新ショック」が覆った。
一方、千葉5区の辛勝は、都市部選挙に自民が抱えるもろさを露呈した。「政治とカネ」を巡る不祥事による自民議員の辞任に伴う選挙だが、野党側は候補を一本化せずバラバラに擁立した。政権批判票が分散し、自民にかなり有利な構図だった。ところが自民支持層をまとめきれず、立憲民主党の候補と接戦を強いられた。
次期衆院選は、小選挙区「10増10減」を実施し、新区割りの下で行う。都市部の議席が拡大する一方で、自民の金城湯池の地方選出の議席はいっそう細る。大都市圏での伸び悩みは衆院選で致命傷になりかねない。
そもそも「4勝1敗」で済んだのは、野党第1党の立憲民主党に勢いがなかったためだ。放送法の「政治的中立」介入疑惑で追及の先鋒(せんぽう)だった小西洋之参院議員が憲法改正を巡る失言で参院政審会長を辞任するという「オウンゴール」に見舞われた。
政権批判の受け皿となったのが維新だ。野党の場合、高投票率の「風」で躍進することが多いが、維新は低投票率下でも、党勢を拡大している。
統一選では、関西全体で自民を脅かす追い風が吹いた。大阪府議選と大阪市議選で自民は26人、19人を公認したが、それぞれ7人、11人しか当選できず維新が単独過半数を制した。兵庫県議選で維新は21議席と前回(9)に比べ倍増、京都府議選も9人が全員当選し、共産党に並んだ。
関東も政令市議選で横浜、川崎などで議席を伸ばし、東京区議選では世田谷、新宿など八つの区で候補がトップ当選した。タカ派保守層にくすぶる岸田政権への不満、議員や政党に…
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週刊エコノミスト
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