手薄な米国の産休育休制度 誇りと工夫で自分の地位守る 多田博子
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近く第1子が生まれる米国人の同僚から育児休暇について相談を受けた。連邦・州政府レベルの制度を調べてみたが、あまりの手薄さに驚いた。
連邦政府レベルでは、FMLA(Family and Medical Leave Act=育児介護休業法)という制度があるが、産休・育休に限らず、事故や病気など一時的に働けなくなった場合にも適用される。休業した場合に12週間までは雇用のみが保障され、経済的な保障はない。
これでは不十分なことから、独自の制度を導入している州もある。その一つであるワシントンDCは、最大12週間の休暇制度があり、1週間1049ドル(約14万円)を上限に所得が保障される。ワシントンDCの平均時給は20ドル程度なので、多くの従業員にとっては十分な保障レベルではあるが、それでも日本の手厚い産休・育休制度とは比較にならない。
政府の制度に加えた米企業独自の産休・育休制度についても、大企業でさえ、2週間程度の有給休暇を与えるケースが大半である。国連の統計によると、現在の米国の出生率は1.78(2022年)。10年に2を割り込み、18年の1.77を底に増加に転じたものの、増加ペースは緩やかである。
ワシントンDCでは子どもの姿や託児所をあまり見かけない。スーツを着た男女が早足で街を行き交うが、子どもの手を引き、家路を急ぐ親の姿や、子どもたちを引率する保育園の先生の姿なども、この街では見たことがない。育児に対する十分な制度上の保障がない中、どのように仕事と育児を両立させているのだろうか。
2人の子どもを育てながら働いている勤続25年の同僚は、いつも朝一番にオフィスにいる。昼食時間もデスクで自宅から持参したサンドイッチなどを片手に、黙々と仕事をこなす。そして午後早い時間にオフィスを出て、子どもの送迎や家族との時間を過ごし、そして必要な仕事は自宅で対応する。
米国では家族の状況に関わ…
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週刊エコノミスト
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