教養・歴史小川仁志の哲学でスッキリ問題解決

人との争いが嫌いで欲望を抑えてばかり。欲を抱けるようになりたいが/172

ルネ・ジラール(1923~2015年)。フランス出身の哲学者。文芸批評でも知られる。著書に『身代りの山羊』などがある。(イラスト:いご昭二)
ルネ・ジラール(1923~2015年)。フランス出身の哲学者。文芸批評でも知られる。著書に『身代りの山羊』などがある。(イラスト:いご昭二)

Q 人との争いが嫌いで欲望を抑えてばかり。欲を抱けるようになりたいが 昔から人と争うのが嫌いなので、欲望を持たないようにしてきました。そのせいで人生がつまらないものになっているような気がします。どうすればもっと欲を抱けるようになるでしょうか?(写真館経営・40代男性)

A まずは「三角形的欲望」で欲望を抱く仕組みを理解しましょう

 私たちは、欲があるのは良くないことだと思いがちです。でも、そんなことはありません。欲が深過ぎるのはたしかに問題ですが、そうでない限り、むしろほどよい欲こそが人間の活動を活発にし、人生を面白くすると思います。

 そこで今回は、フランスの思想家ルネ・ジラールの欲望に関する考えを参考にしたいと思います。ジラールによると、私たちは何か対象に対して直接的に欲望を持つのではありません。そうではなくて、それを欲している他者を模倣することによって、他者の媒介を経て欲望を持つというのです。この自分、他者、対象の間で形成される三角形を「三角形的欲望」と呼びます。

表に出してもいい欲望

 つまり、何かが欲しいのではなく、それを誰かが欲しがっているから、自分も欲しくなるということです。友達の持っているものが欲しくなるとか、テレビのCMで楽しそうに使っていたから欲しくなるというように。

 ただそうすると、欲しい対象が誰かと競合するような場合、ライバル関係になるため、衝突が生じてしまいます。兄…

残り740文字(全文1340文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

4月30日・5月7日合併号

崖っぷち中国14 今年は3%成長も。コロナ失政と産業高度化に失敗した習近平■柯隆17 米中スマホ競争 アップル販売24%減 ファーウェイがシェア逆転■高口康太18 習近平体制 「経済司令塔」不在の危うさ 側近は忖度と忠誠合戦に終始■斎藤尚登20 国潮熱 コスメやスマホの国産品販売増 排外主義を強め「 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事