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あなたはどっち リノベ?新築?(編集部)

リノべるのショールーム。リビングが特徴的(東京都港区)
リノべるのショールーム。リビングが特徴的(東京都港区)

 中古マンションを買って内装を自分好みに仕上げる購入者が増えている。一方、高騰が続く新築の購入意欲も衰えていない。

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 マンションの間取りといえば、ファミリー層を対象とした3LDKや4LDKが定番だが、近い将来、その認識は過去のものになるかもしれない。近年人気が急上昇しているリノベーション(以下リノベ)が、昭和から平成時代にかけて定着した住み方の既成概念を覆そうとしている。

 リノベは戸建ても対象になるが、マンションの場合、内装の壁紙や設備、間仕切りなどを撤去して、コンクリートの躯体(くたい)がむき出しになった「スケルトン」の状態に戻す工法が一般的だ。この方法だと、自分好みの間取りや内装に作り直すことができるからだ。

リビングを広くする

 このリノベ専業で急成長しているのが、2010年に創業したリノべる(東京都港区)。同社の三浦隆博・上席執行役員によると、中古マンションの購入と合わせて、3LDK、4LDKといった間取りを1LDKにする事例が多いという。「リビングを広くすることで、住まいとしての一体感が出てくる。収納も各部屋に置くのではなく、1カ所にまとめることが多い」(三浦氏)という。

 同社の顧客となったある夫婦は、21年12月に都内の中古物件を購入。75平方メートル・3LDKの間取りを1LDKにリノベして暮らしている。初のマイホームとなる物件探しをしている時には、内装や間取りに関して、夫婦間で好みや意見の相違があったという。妻Aさん(30代、会社員)は本誌の取材で、「3LDKなどの決まった間取りの物件の中から選ぶことが難しかった。リノベを検討対象にすることで、夫との意見の違いを乗り越えることができた」と話す。

 Aさん夫婦は、中古マンション探し、設計、内装、住宅ローンの選定といった入居までに必要になる大半の業務をリノべるに依頼した。「物件探しからローンの調整まで、一気通貫で請け負ってもらえることが、依頼しようと考えた決め手だった」と話す。「割安な物件を手に入れる」という当初の狙いもかなったという。

 リノベ・ビジネスは、不動産会社が中古物件を買い取り、自社で内装に手を入れてリノベ物件として売り出す「再販買い取り型」と、物件探しから設計、施工、ローン選定まで全ての業務を手掛ける「ワンストップ型」に大別される。

 リノべるはワンストップ型の事業者だ。三浦氏は「物件探し、設計、工務店による工事、住宅ローン選びを、マンションの購入希望者自身ですべてこなすのはとても煩雑な作業になる。購入希望者に代わって、各関係者との調整をスムーズに進めるのが当社の強み」と強調する。

 リノベは一過性の流行ではなく、今後の住宅購入の大きな柱になりそうだ。00年から22年にかけて、首都圏におけるマンション供給戸数は約7割も減少している(不動産経済研究所調べ)。人口減少の時代において、かつてのような大量供給が復活することは見込みにくく、中古物件がその受け皿にならざるを得ないからだ。

 従来、日本では欧米に比べて不動産市場における中古住宅の存在感が非常に小さかった。新築物件を含めた住宅取引における既存(中古)住宅の比率は14.5%(18年)止まり(国土交通省資料から、以下同)。米国の81%、英(イングランドだけ)85.9%、仏69.8%に比べて極端に低い。リノべるの三浦氏は、「今あるものを使いながら価値を高めていく住み方が今後は大事になる」と述べている。

新築は「間取り上手」が人気

「これは1LDKの“黄金比率”のモデルです」──。日鉄興和不動産(東京都港区)の広報担当者は力を入れる。同社は22年首都圏における供給戸数で5位(不動産経済研究所調べ)のマンション大手。「リビオ」ブランドで知られる同社マンションの特徴として、「狭くても間取りが上手で広く感じる」(業界関係者)ことが挙げられる。

リビオのモデルルーム。限られた空間で広く見せるノウハウが強み(東京都港区)
リビオのモデルルーム。限られた空間で広く見せるノウハウが強み(東京都港区)

 東京・品川に今年3月に新設したブランド発信拠点に設置した1LDKのモデルルーム(写真)の広さは33平方メートル。ワンルームよりも少し広いくらいの面積だが、キッチン、ダイニング、リビングスペースに、間仕切りのある寝室と収納をコンパクトにまとめた内装は、単身者向けとしては十分な広さを感じる。

 同席した販売担当者は、「当社はコンパクトなマンションを他社に先駆けて多く供給してきた」と話す。廊下を小さくするなどの工夫により、狭いスペースでも効率的な間取りにできるという。マンション価格が史上最高値圏で推移する中で、限られた土地を有効に使うことで、新築物件の価格を少しでも低コストに抑えるノウハウが、同業他社に対する差別化ポイントになる。

 とはいえ、東京のJR山手線内側や沿線の新築マンションだと1億円を上回る物件が続出している。「高すぎて、普通の勤め人には手が出ない」のかというと、そうでもないようだ。日鉄興和でも東京都心近くで1億円超の物件を販売しているが、「売れ行きは順調」(販売担当者)だという。主力の購買層はやはり、夫婦で高収入のいわゆる「パワーカップル」たち。「夫婦で5000万円ずつ借り入れて1億円超の物件を購入するケースも多い」(同)という。

 日鉄興和は、ICT(情報通信技術)を駆使した設備導入にも積極的だ。例えば、洗面台の床下にセンシング機能を埋め込み、鏡に向き合うと、体重や体脂肪率などを表示する機能を都内で発売した物件に昨年導入。システムは、凸版印刷が開発した。このほか、スマートフォンからドアやカーテンの開閉操作ができるIoT(モノのインターネット)にも対応しているという。前出の販売担当者は、「新築マンションの良い点は、最新の設備を導入しやすいこと」と述べた。

(浜田健太郎・編集部)


週刊エコノミスト2023年5月16日号掲載

最強のマンション購入術 リノベと新築 自分好みに改装か 最新設備の新築か=浜田健太郎

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