インタビュー「中古マンション価格は調整局面入り」高橋正典・価値住宅代表取締役
新築マンションの平均価格が首都圏でついに1億円を超えた。なぜこれほど値上がりしているのかというと、供給数が大幅に減少しているからだ(図2)。首都圏の新築マンション供給は2000年から22年までに約3分の1に減少している。
なぜ減っているかというと、マンション開発は大手に限られるようになったから。リーマン・ショック(08年)の頃に、ジョイント・コーポレーション、ゼファーなどのデベロッパーが相次いで倒産。その後は、旧財閥系や電鉄系、商社系などの大手しか生き延びなかった。財務体力とブランド力のある大手は価格を下げることもなく、売り切ることができる。
新築の好況に引きずられるように、中古マンションも良い物件が出たらすぐに売れる状況が続いた。原因はコロナ禍だ。自宅に籠もるため、住宅を手放す人が極端に減った。在宅勤務が増え、賃貸の部屋だとオンライン会議もやりにくいということで、住宅を買う選択肢が広がった。金利も非常に低いから、毎月のローン返済額が賃貸住宅の家賃と同じかそれ以下でマイホームを買うことができると気付く人が増えた。
20年5月ごろから、中古マンションの売り出しが極端に減り、中古物件が急騰するバブルが起きた。ただ、22年の夏ごろから中古物件の在庫が増え出した。価格も下がり気味になり調整局面に入ったといえる。
ただ、中古物件も大きく下げることはなく、せいぜい1割程度ではないか。5000万円の物件が4500万円に落ちれば、迷っている人の背中を押す効果はあるだろう。むしろ、今後は金利の動向が市況に影響しそうだ。
10%程度価格が下がっても、35年返済のローン金利が0.6%上がれば支払額はほとんど同じ。価格の下げを待っても、その後に金利が上がる可能性を踏まえると、支払総額にあまり違いがないことも考慮すべきだろう。
(構成=浜田健太郎・編集部)
■人物略歴
たかはし・まさのり
1970年東京生まれ。宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー。著書に『プロだけが知っている!中古住宅の選び方・買い方』(朝日新聞出版)
週刊エコノミスト2023年5月16日号掲載
最強のマンション購入術 インタビュー 高橋正典・価値住宅代表取締役 中古価格は調整入り 金利動向に注視を